【 天と地と繋がるセドナの旅】ネイティブアメリカンの聖地 – 神秘の泉「モンテズマウェル」

モンテズマ城国定公園にある「モンテズマ ウェル」は、石灰岩が陥没したことによってできた泉。ホピ族(ネイティブアメリカンの部族のひとつでホピは「幸せの民」という意味)の聖地と言われる神聖な場所で、形状が大きな井戸のような形をしているのでモンテズマ井戸(Wellは「井戸」の意)と呼ばれています。

セドナから「モンテズマ ウェル」へGO!

「モンテズマ ウェル(Montezuma Well」」へは、フェニックス空港からはI-17を北上し車で約1時間半。セドナのビレッジ オブ オーク クリークからは179号線を南下し車で約20分(約18km)と近く、モンテズマ キャッスルまでの距離の中間点あたりに位置します。

オープンは、クリスマス、元旦を除き毎日8時から17時(入園は16:45まで)。入園料はフリーで駐車場・トイレ完備です。


I-17, Rimrock, AZ

モンテズマ ウェル展望台

駐車場からモンテズマウェルが望める展望台(この真下に断崖住居跡)までは約130mほど。眼下には直径約120mの巨大な泉が静かに横たわっています。

遥か昔に荒涼とした乾いた大地に忽然と現れたモンテズマウェルは、地下水によって侵食され石灰岩が陥没してできた泉…モンテズマ ウェルは古代よりネイティブアメリカンたちの神聖な場所だったと言われ、「創造主と共に地底で暮らしていたホピ族の祖先が大洪水をきっかけにモンテズマウェルより地上に顕れた」というヤバパイ族の神話があります。


Montezuma Well

モンテズマ ウェルを囲む断崖と住居跡

展望台横の階段を降りていくと、モンテズマ ウェルを囲む石灰岩の岩窟遺跡がよく見えます。アメリカ先住民のホホカム族やシナグア族が11世紀頃につくった住居と言われ、当時の人々はこの絶壁を梯子、または狭い棚沿いに歩いていたのだそうです。


Cliff dwellings of the Sinagua people

モンテズマ ウェルの畔にあるスウォレット遺跡

階段を降りトレイルを進んだ先端には日陰の杜のスウォレット遺跡があり、容赦ない暑さをしのぐために使用されたという夏場の住居などを間近に見ることができます。

水面に近づくこともできますが、日陰が多い上に鬱蒼とした木々で暗くジメジメとした空気。それに加え周辺のあまりの静寂さに、恐れすら感じる雰囲気です。

モンテズマ ウェルにあるいくつかの案内板によるとプエブロ遺跡やピットハウスなど、これらの住居は1100年から1400年の間に使用されたと記されています。灌漑用水路を除き、敷地内にある最も古い遺跡は、伝統的なホホカムスタイルの「ピットハウス」(西暦1050年頃のもの)で、 また公園内には50以上もの住居が見つかっており、食料貯蔵や宗教儀式など、生活空間以外の目的で使用されたものも多くあるそうです。


Swallet rooms, Swallet Ruin

モンテズマ ウェルの全景

モンテズマ ウェルを上から眺めることができるトレイルの先端に、岸壁住居跡と共にモンテズマ ウェルの全景を眺めることができるも展望台があります。そのすぐ崖下にスウォレット遺跡があるのですが、泉の湧水はこの下の岸壁を通りぬけ反対側のアウトレットへと流れていきます。

太古より枯れることのない神秘の泉

モンテズマ ウェルの水底にある水源からは、毎日約570万リットルもの水が湧き出ているといい、周辺一帯が激しい干ばつに襲われてもモンテズマウェルだけは絶え間なくほぼ一定量の湧水が溢れ出してくるそうで、その水温も1年を通して23度前後に保たれているという不思議なオアシス。

モンテズマウェルの水は、高レベルのヒ素を含んだ高濃度の二酸化炭素で満たされており(通常の淡水濃度の80倍以上)、極端に酸素が乏しいために魚類、両生類などが棲むことはできないと言われています。

この独特な生息地には、地球上で他のどこにも見られないという小型のエビに似た端脚類、ヒル、カタツムリ、水サソリ、珪藻と呼ばれる単細胞植物の一種など、少なくとも5つの米国南西部の固有種が棲息しているそうで、これらの生物を餌にする多くの鳥が泉にやってきます。

モンテズマ ウェルの木々

カエデの一種であるアリゾナシカモアをはじめ、アリゾナウォルナット、コットンウッド、アカシア、モミ、ベルベットアッシュ、ソルトブッシュ、ジュニパーなどの木々を見ることができ、秋には美しい紅葉が見られます。

岸壁の隙間を張り巡らす木の根と枝に命のパワーを感じます…


Wet Beaver Creek

モンテズマ ウェルの灌漑用水路

歩道沿いには「ウエット ヴィーバー クリーク(Wet Beaver Creek)」の透き通った水流が軽やかに流れています。また先史時代に農耕用の灌漑用水として使用されたという水路があり、何度も再建されながらも今も部分的にオリジナルが現存しています。水路の長さは推定約11km、下流の農地に水を供給していたという耕作地の跡も残っています。

モンテズマ ウェルから湧き出る水には多くの石灰が含まれているため、水路の底や壁面に蓄積された石灰は硬化して、セメントのようなコーティングになり水路の形状を保っているのだそう…用水路沿いの小径はアウトレットまで続いています。


Wet Beaver Creek and Prehistoric Canal

ユニークな巨木がそびえ立つアウトレット

モンテズマウェルの湧水は、スウォレット遺跡がある吸い込み穴の「スウォレット(swallet)」から約46mの石灰岩の岸壁を通って反対側の出口「アウトレット(Outlet)」に勢いよく流れてきます。ここはとても気の良い場所で、手を伸ばせば簡単に温かい水流に触れることもできます。

水路のすぐ脇には、まるで恐竜が岩穴から這い出してきたような形をした樹齢数百年というシカモアの大木が2本あります。白竜のような木と例える人も多く、今にも動き出しそうな躍動感のある木々です。


Well’s Outlet and Sycamore trees

ノスタルジックな夕暮れ時

遠い昔の先史時代、多くのネイティブアメリカンがこの砂漠のオアシスに暮らし、悠久の時を経て今もなお神聖な場所としてひっそりと佇むモンテズマ ウェル…。

神々に祈り、食べ物を分かち合い、平和に暮らしていた時があり、また幾度となく天災や争い戦いなどに襲われた時があり…、何事もなかったようなこの静寂さのなかで、今ある平和に感謝しながら太古の昔に思いを馳せるのでした…。

Montezuma Well
Forest Service Rd 618, Rimrock, Arizona

セドナ周辺 マップ

あとがき…

今回は時間がなくて訪問できませんでしたが、「モンテズマ キャッスル(Montezuma Castle)」(有料)と合わせて見学するのがおすすめ。こちらにはヴィジターセンターがあるのでより多くの情報がゲットできます。

またモンテズマ ウェルから車で15分ほど東に行ったところに「V バー V ヘリテイジ サイト(V Bar V Heritage Site)」があり、1150年頃の壁画を見ることができます。興味があればこちらにも立ち寄ってみると面白い発見があるかもしれません。

歩いていると変わったトカゲなどの小動物に出会いますが、危険なヒアリなども見かけます。セドナに限らずアメリカにはヒアリが何処でも出没するので、歩道以外のブッシュなどには踏み込まないよう十分に気をつけながら散策を楽しんでください。