【アリゾナ州チンリー】ナバホ族の聖地 – プエブロ遺跡「キャニオンデシェイ国定公園」を訪ねる

米国アリゾナ州の北東部に位置する「キャニオンデシェイ国定公園」は、高さ300mもの断崖が40km以上の長さに渡って続く峡谷。サウスリムとノースリムの二手に分かれるコースがあり、どちらも自由に見学することができます。今回はグランドサークルのロードトリップで、キャニオンデシェイのサウスリムをクイック観光しました。

※こちらの記事は他サイトに掲載していた2014年9月のブログをもとに再投稿しています。

ナバホ自治区にある「キャニオンデシェイ国定公園」へ

モニュメントバレーを10時に出発し、約1時間半で「キャニオンデシェイ国定公園(Canyon de Chelly National Monument )」に到着。入園料は無料でゲートもありません。

最寄りの町チンリー(Chinle)からインディアンルート7(Indian Route7)を東に約5kmほど行ったところにビジターセンターがあるので、まずはそちらで情報収集です。

まずは一番遠い東端のスパイダーロック展望台へ向かい(車で約30分)、西に戻りながら各展望台をまわりました。

Canyon De Chelly NM Vistor Center

キャニオンデシェイ国定公園について

キャニオンデシェイ国定公園はナバホ族の居留地にあり、国立公園局の管理下にあるものの土地はナバホ族のものであるというとても珍しい場所。ナバホ族の聖地であり、またアメリカ大陸の中で人類が最も長く生息している地域のひとつとして、考古学・地質学的に非常に貴重な存在と言われている公園です。

キャニオンデシェイは、スペイン語から派生した言葉で「岩の渓谷」の意。アリゾナ平原の大地が川によって侵食され形成された渓谷は、300mもの垂直に切り立った断崖が細長く東西に伸びています。

キャニオンデシェイでは紀元前の古代プエブロ族の住居遺跡が見られるだけでなく、現在もナバホの人々が農耕を営みながら暮らしています。ナバホ族の生活とプライバシーを保護するため、ホワイトハウス遺跡を除きジープのキャニオンツアーに参加する以外は、許可無しで谷底に行くことはできません。

個人で自由に観光ができるのは、サウスリム(South Rim)とノースリム(North Rim)に点在する展望台。ビジターセンターを分岐点に、「キャニオンデルムエルト(Canyon del Muerto/死の谷を意)」のノースリムドライブと「キャニオンデシェイ(Canyon de Chelly)」のサウスリムドライブの2本の道路が峡谷の端に沿って続き、道路沿いの展望台から峡谷といくつかのプエブロ遺跡の景色を眺めることができます。(写真撮影はノースリムは朝、サウスリムは午後が良いとのこと。)


Canyon De Chelly National Monument Map

Canyon De Chelly NM

キャニオンデシェイのランドマーク「スパイダーロック」

高さ約240mの2つの尖塔「スパイダーロック(Spider Rock)」は、創造主スパイダーウーマンが住むというナバホ族の聖地。

ナバホの神話によると、山頂にスパイダーウーマンが住んでおり、彼女は織物の技術をナバホの人々に教えたのだそう。言うことを聞かない不従順な子供たちをむさぼり食う(岩の白い部分は子供たちの骨)とも言われ、 ナバホの子供たちは「いい子にしていないとスパイダーウーマンに食べられちゃうよ。」と聞かされて育つのだとか。


Spider Rock Overlook

スプリング渓谷に囲まれた「スライディングハウス遺跡」

「スライディングハウス遺跡(Sliding House Ruin)」は、900年頃から1200年頃まで使用されたと推定されている住居群。繁栄した先住民族の暮らしも13世紀になるとメサヴェルデ同様、この地を放棄し人々がこつ然と姿を消したのだそう…。大規模な干ばつがあったのではないかなど様々な仮説があるものの、はっきりとした理由は分かっていないようです。


Sliding House Ruin

唯一許可なしで渓谷に降りて見学できる「ホワイトハウス遺跡」

キャニオンデシェイの中で最も有名な「ホワイトハウス遺跡(White House Ruin)」は、約1000年前のプエブロ文化初期に建てられたという小さな集落。展望台からは緑の多い渓谷と高い絶壁の岩山が続く絶景が望めます。


White House Overlook

巨大な絶壁には大小様々な岩窟が見えます。

ホワイトハウスは1040年頃から1275年頃まで使用されたと推定されています。

80部屋を誇る岩窟住居で上下2つの部分で構成、ひとつは岩壁の麓、もうひとつは数メートル上の岩窟にあります。

唯一許可無しでこの展望台から出ているトレイル(標高差約180m、片道約2km)を降り、ホワイトハウス遺跡を見学することができます。

White House Ruin

2つの渓谷が交差する展望台「ジャンクション オーバールック」

デシェイ渓谷とデルムエルト渓谷が交差するポイントにある「ジャンクションオーバールック(Junction Overlook)」からは、1100年頃から1300年頃まで使われていたという住居群「ジャンクション遺跡(Junction Ruin)」(写真左側)と、そのすぐ左手に1882年の最初の探検で発見されたという「ファーストハウス遺跡(First House Ruin)」が見えます。また手前の巨大な岩山後方の絶壁にも住居跡が見られます。


View from Junction Overlook

ホワイトハウス展望台から見る遺跡群

ホワイトハウス遺跡の展望台からも望遠鏡などを使ってジャンクション遺跡とファースト遺跡(写真中央の2ヶ所)を見ることができます。遺跡ウォッチには望遠鏡が必須ですね。


View of the First Ruin and Junction Ruin from White House Overlook

眼下にナバホの生活が垣間見れる「Tseji」

園内には今も農業を営むナバホ族が暮らしており、「Tseji(発音不明)展望台」からは畑や動物、「ホーガン(Hogan)」と呼ばれるナバホ族の伝統的な住居やたてものなどが見えます。

乾燥した土地とはいえ、渓谷内は緑豊かな肥沃な地といった印象。ここを去らなければいけなかった理由は未だ解明されていないとしても、それまでの先住民族たちの暮らしは、思いのほか快適だったように見えます。

峡谷の谷底は海抜約1600m。冬の間だけ渓谷に流れるという「チンリーウォッシュ(Chinle Wash)」は、夏季のため乾燥し、緑に覆われていました。


Tsegi Overlook

あとがき

数日前に岩窟遺跡のメサヴェルデを見学しているので、キャニオンデシェイ国定公園では、デシェイ渓谷のサウスリムのみを観光。ちなみに、ノースリムドライブには、断崖住居でミイラが発見されたという「マミーケイブ(Mummy Cave)」のほか、全3か所の展望台があります。約2時間の短い時間でしたが、岩窟遺跡と美しい渓谷の絶景を楽しむことができました。

グランドサークルの旅で気をつけたいのは、州間を移動する際と夏季実施のDST(Daylight Saving Time)採用による夏時間の時差です。ナバホ自治区はDST採用のため、モニュメントバレーからキャニオンデシェイのナバホ自治区間の移動では時差が発生しませんでしたが、アリゾナ州ではDSTを採用していないので、ナバホ自治区を出るとたちまち1時間の時差が発生してしまうなどなど、ちょっと複雑です。ちなみにキャニオンデシェイのあとに向かった「化石の森国立公園」はDST非採用のアリゾナ州だったため時計を1時間戻すことができ、得した気分になるという好パターンのルートでした。

タイムゾーンの違う州間移動、また夏季のDST採用時の時差を踏まえて旅程とタイムスケジュールを考えるのは重要なポイントですね。

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