まずは「コッツウォルズ」ってどんな場所? 壮観な田園風景が広がる「コッツウォルズ(Cotswolds)」は、ロンドンの北西約200km、ウィルトシャー・グロセスターシャー・オックスフォードシャー・ウァ…
【イギリス・コッツウォルズ】丘の上に佇むブロードウェイ・タワーと美しきブロードウェイ村を歩く
目次
芸術家に愛された村「ブロードウェイ」へGO!
コッツウォルズ北東部に位置する「ブロードウェイ(Broadway)」は、イングランド・ウスターシャー州に属する美しい村で、行政的には一つの教区を成しています。中央を走るハイ・ストリート(High St)は、17世紀にはロンドンとウスターを結ぶ駅馬車の停車地として栄え、17〜18世紀に建てられた石造りの建物が整然と並びます。その風景の美しさから「コッツウォルズの宝石」とも称され、多くの芸術家や文化人に愛されてきたといいます。村から少し坂を上ると、コッツウォルズのなだらかな丘陵を一望できる「ブロードウェイ・タワー」が姿を現します。
風光明媚な丘の上に立つ「ブロードウェイ・タワー」
今回はチッピングカムデンを散策後、南西約7kmの丘陵地帯に位置する「ブロードウェイタワー(Broadway Tower)」に向かいました。ブロードウェイの村からは、車で約10分(徒歩では約1時間)ほど坂道を上がったところにあります。
B4081を走行中、石垣に囲まれた広々とした牧草地にのんびりと草を食む羊の群れに遭遇しました。まさに、コッツウォルズという名の由来を体現するような、穏やかで象徴的な風景です。
A44からバックル・ストリート(Buckle St)に入るとすぐに門柱があり、そこから1kmほど進んだところにエントランスがあります。
ブロードウェイ・タワー・カーパークへ
バックル・ストリートの途中に何台か駐車できるスペースがありますが、週末の日中は混雑しているだろうということで、「ブロードウェイ・タワー・カーパーク(Broadway Tower Car Park)」のチケットを日本で事前に購入しました。駐車場入口にも自動券売機があります。(プリントアウトした紙またはレシートはダッシュボードへ)
ショップ&カフェ「モリス&ブラウン」
駐車場の入口付近には売店とギフトショップが併設された「モリス&ブラウン カフェ(Morris & Brown Cafe)」があります。ここでドリンク&フードをゲットして、ピクニックに出かけるのもいいですね。ちょうどランチ時で店内は行列でした。
ウォーキングコース(ショートコース)を歩く
ブロードウェイタワーには、2つのウォーキングコース(1.2km/約20分のショートコースと2.5km/約2時間)があります。
まずはタワーまで緩い坂道を登り、時間があればそのままショートコースを反時計回りに歩くことにしました。
高さ約20mのゴシック風タワー
ゆるやかな坂を登ると1798年にコベントリー伯爵によって建てられという石造りの塔「ブロードウェイ・タワー(Broadway Tower)」が姿を現します。コッツウォルドストーンで築かれたその塔は、荘厳でありながらどこか愛らしく、周囲の自然にしっとりと溶け込んでいます。
高さ約20mの見晴らしの良い塔からは遠くまで見渡すことができ、コベントリー夫人の実家がある35kmほど離れたウスター州からも見えるように、塔から狼煙を上げたといいます。「私はここで元気でやっています。みなさんもお元気ですか」そんな思いが、煙に込められていたのかもしれません。
コッツウォルズの空にそびえるランドマーク
コッツウォルズを代表するランドマーク「ブロードウェイ・タワー」は、コッツウォルズ地方で最も標高が高いブロードウェイ・ヒル(標高312m)の頂に建っており、ブロードウェイの村をはじめ、晴れた日にはイングランドの13の州を一望できると言われています。
コッツウォルズをこよなく愛したウィリアム・モリスもまた、その美しい眺めと静けさに心を動かされ、アーツ&クラフツ運動の同志たちと共に、この塔で創作活動に励んだといいます。塔内部は展示スペースになっていて、上まで登るには入場料が必要ですが、1階のショップは無料で立ち寄ることができます。
丘の上からの眺め
タワーの麓からの眺めも十分に素晴らしい景色です。丘の上のベンチに腰掛けて、ハフキンスのエクレアを頬張りながら、目の前に広がる壮大な景色を堪能しました。
ウォーキングコースの長い坂
小休憩のあとは、短時間で回れるショートコースを軽く歩いてみることにしました。丘の上からは長い下り坂が続きます。このコースを時計回りに進むと、最後にこの長い坂を登ることになり、なかなかの難所に。タワーから反時計回りで歩いたことで、きつい登りを避けられて正解でした。
丘陵でくつろぐ羊たち
坂の途中、羊たちがのんびりと草を食み、寛いでいる姿が見られました。風に揺れる野草の香りがどこか懐かしい感覚を呼び覚まします。
タワーの近くで鹿たちにも出会えると思っていたのですが、ショートコースの散策中には見ることができませんでした。一部工事中だったのでどこか別の場所に放牧されていたのかもしれません。
丘から見下ろすコッツウォルズの田園風景
なだらかな丘の上からは、穏やかなコッツウォルズの風景が広がっています。淡い緑の牧草地が幾重にも重なり合い、その間を縫うように石造りの家々が佇んでいます。
遠くまで見渡せる視界の中、霞む地平線の先まで豊かな自然が続きます。人の営みと自然が美しく調和した、英国らしい牧歌的な風景がそこに息づいていました。
ショートコースのちょうど中ほどで空を見上げると、木々の背後にタワーがいい感じに見えました。新緑の季節には、タワーが緑の合間から少しだけ顔をのぞかせ、また違った趣のある風景へと変わっていくのでしょうね。
ショップ&カフェ「タワーバーン」
散策コースの途中にもカフェがあります。2025年3月末現在一部改装中でしたが、カフェやショップは営業していました。
ブロードウェイタワーの散策を終えて
最後はゆるやかな坂道を上り、駐車場のある出発地点へと戻ってきました。わずか1時間ほどの短い滞在でしたが、コッツウォルズの風を感じながら、美しい景色との出会いに心癒される、素晴らしいひとときとなりました。
Broadway Tower
Middle Hill, Broadway, Worcestershire, Cotswolds
「ブロードウェイ」の村を歩く
ブロードウェイタワーを散策したあとは、コッツウォルズ観光で密かに人気の小さな村「スノーズヒル」を経由し、「ブロードウェイ(Broadway)」へ向かいました。
村の名前が示すとおり、およそ20m幅の広い通り沿いには、アートギャラリーやティールーム、ブティックが軒を連ね、観光客に人気の高いスポットとなっています。
なかなか駐車スペースが見つけられなかったので、すぐ裏手のスーパーへ。買い物がてら駐車させてもらい、約20分のクィック散策に出かけました。
通り沿いには、コッツウォルズの伝統的な茅葺き屋根やライムストーン造りの建物が並び、歴史的な景観が丁寧に保たれています。木製の道標やガス灯風の街灯、そして英国らしさを象徴する赤い郵便ポストが、クラシックで趣ある雰囲気をいっそう引き立てています。
舗装された小道や手入れの行き届いた芝生、そしてクラシカルな建物群が調和した「歴史と現代の共存」が美しく表現されたヴィレッジです。
ハニーストーンの外壁に絡みついたツタもコッツウォルズではよく見かける印象的なシーンです。
伝統的なティールーム「ティザンズ」
「ティザンズ・ティールーム(Tisanes Tea Rooms)」は、イギリスの伝統的なティールーム。本格的なクリームティー(スコーンとクロテッドクリーム&ジャム)をはじめ、自家製のサンドイッチやケーキ、アフタヌーンティも楽しめる人気店で、紅茶の種類も豊富に揃っています。大きな出窓の前にさりげなく置かれたアンティークの自転車が、絵になる光景を演出しています。
本来はティザンズの中庭で、ゆったりとアフタヌーンティーを楽しむ予定だったのですが…、スケジュール通りにいかないのが旅の常、残念ながら時間が足りず断念しました。そもそも店内はすでに満席でウェイティング状態。やはり、大人気のティールームでした。
話題のクラフト蒸留所「コッツウォルズ蒸留所」へ
「コッツウォルズ蒸溜所(Cotswolds Distillery)」は、2014年創業の年若い蒸留所ながら、ラベンダーの香りを取り入れたクラフトジンが世界No.1に輝き、一躍その名を知られる存在に。地元産のウイスキーやジンなどを取り揃える人気スポットです。
蒸留所直営ショップは、現在ストートン(蒸留所併設の本店)、ブロードウエイ、ボートン・オン・ザ・ウォーターの3ヶ所に展開。店内には美しくディスプレイされた商品が並び、ギフトセットも充実しています。丁寧な説明とともに試飲も可能で、旅の思い出にぴったりな1本に出会えました。
英国の歴史を感じる名門ホテル「ザ・リゴン・アームズ」
「ザ・リゴン・アームズ(The Lygon Arms)」は、14世紀(およそ1377年頃)に建てられたとされる歴史ある宿泊施設。元々ステージコーチ(駅馬車)の宿場として利用されたのが始まりで、16世紀以降は増改築が重ねられ、世界の著名人が次々と訪れるようになったといいます。
本館の正面玄関にはユニオンジャックがはためき、中庭へと続く石畳の小道や風向計のある屋根などが、英国らしい趣と品格を漂わせていました。2階から木造の渡り廊下でつながるレストラン&パブ「ザ・タバーン(The Tavern)」も、とてもユニークな印象です。
ザ・リゴン・アームズの中庭
クラシカルな趣を残す本館に対し、中庭エリアには近年リノベーションされたモダンスタイルの客室が並びます。手入れの行き届いた庭園には彩り豊かな植栽が美しく配され、石畳の小道を歩くだけでも心が満たされるような、贅沢な時間が流れています。
The Lygon Arms
High Street, Broadway, Worcestershire, WR12 7DU