まずは「コッツウォルズ」ってどんな場所? 壮観な田園風景が広がる「コッツウォルズ(Cotswolds)」は、ロンドンの北西約200km、ウィルトシャー・グロセスターシャー・オックスフォードシャー・ウァ…
【コッツウォルズ・レンタカーの旅①】ボートン・スノーズヒルほか人気&穴場15の村を巡る絶景ドライブ
目次
まずは「コッツウォルズ」ってどんな場所?
壮観な田園風景が広がる「コッツウォルズ(Cotswolds)」は、ロンドンの北西約200km、ウィルトシャー・グロセスターシャー・オックスフォードシャー・ウァーウィックシャー、ウスターシャーの5州に跨る約1280k㎡の南東に緩やかに傾斜した丘陵地帯にあり、「ハート オブ イングランド(Heart of England)」などと呼ばれています。
ストラットフォード、オックスフォード、バース、チェルトナムと、主要都市に囲まれたコッツウォルズ地方は、12-18世紀に羊毛加工産業の交易で栄え、この「コッツウォルズ(Cotswolds)」という地名は、古英語の「コット(Cot/羊の囲い)」という言葉と高地を表す「ウォルズ(Wolds/木のない丘陵や高原)」が語源と言われています。
コッツウォルズ地方の特徴である蜂蜜色の建物群は、コッツウォルズストーンとも言われているライムストーン(limestone/石灰岩)でできており、中世時代に建てられたマナーハウス(荘園領主の邸宅)やコテージなど、現在も多くの建物が当時のまま現存しています。この石灰岩は、鋸で切れるほど柔らかいため加工しやすく、空気に触れることで徐々に硬化して耐久性が増すため、質素な家や石垣から教会、領主の邸宅、さらには宮殿に至るまで、あらゆる建築に利用されてきたといいます。
羊とともに石灰岩は、今日のコッツウォルズの礎を築いており、この特有の石材で建てられた民家には、今なお昔ながらの暮らしが息づき、歴史と自然が調和した静かな日常が守られています。
【コッツウォルズの特徴】
- 古くから羊の放牧地として栄え、17世紀には羊毛の集散地として発展
- 地元産の蜂蜜色の石灰岩「コッツウォルド・ストーン」でできた石造りの村々が点在、同調的な建物の景観が美しい
- 英国内でも最も美しい場所のひとつに数えられている
- なだらかな丘陵地帯の田園風景や四季折々の風景も楽しめる
- 映画「ハリー・ポッター」のロケ地やピーターラビットの縁の地としても人気がある など
ヒースロー空港からレンタカーで「コッツウォルズ」へGO!
今回はレンタカーを利用して、2泊3日でコッツウォルズを巡ってきました。公共交通機関の利用も検討しましたが、一口にコッツウォルズといってもかなり広範囲に村が点在しており、短期間で効率よく、時間に縛られず自由に移動するには、やはり車が最適。ということでヒースロー空港のSIXTでAT車を事前予約しました。また、ロンドン観光と合わせて観光する場合は、ロンドン中心部の交通規制や渋滞、さらに渋滞税(Congestion Charge)の負担もあるため、空港でレンタカーを借りて郊外から回るのが得策です。
ただ、当日はフライトが1時間遅れてヒースロー空港に到着。そのうえ、荷物がなかなか出てこなかったり、レンタカー窓口が見つからなかったりと、小さなトラブルが続き、思いのほか手続きにも時間がかかりました。さらに夕方のラッシュアワーに巻き込まれ、通常であれば約1時間半で到着できるところを、2時間以上かかってようやく「ボートン・オン・ザ・ウォーター(Bourton-on-the-Water)」に到着。
夕暮れ時の散策を楽しみにしていましたが、到着時にはすでに19時半を過ぎており、あたりはすっかり暗くなってしまっていました。
ボートンの「オールド マンセ ホテル」に宿泊
ボートン・オン・ザ・ウォーターで宿泊したのはリバーサイドに佇む「オールド マンセ ホテル」。18世紀築の元牧師館(manse)を改装した建物で、古色蒼然とした外観に暖炉付きのインテリアなど、伝統的な英国の雰囲気を纏った歴史あるホテルです。
夕食はホテル前の人気レストラン「ローズ・ツリー(The Rose Tree)」でいただく予定でしたが、閉店間近で入店できず、初日はホテル内のレストランで簡単に食事を済ませ、早めに就寝しました。
▼「オールド マンセ ホテル」のブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
英国一美しい村バイブリー「アーリントン・ロウ」
コッツウォルズ2日目は、朝5時にホテルを出発し、およそ20km南に位置するバイブリー(Bibury)の「アーリントン・ロウ(Arlington Row)」から、「ローワー・スローター(Lower Slaughter)」、「アッパー・スローター(Upper Slaughter)」、「ボートン・オン・ザ・ウォーター(Bourton-on-the-Water)」へと車で順に移動し、早朝の静けさに包まれた村々を散策しました。
バイブリーは、英国の詩人ウィリアム・モリスが「イギリスで最も美しい村」と称え、なかでも石造りの家々が並ぶアーリントン・ロウは、コッツウォルズを象徴する風景、また英国のシンボル的な風景としても有名なスポット。素朴で美しい英国の原風景に心が癒されます。
▼「アーリントン・ロウ」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
田園の丘陵地帯が続く「アッパー / ローワー」
アーリントン・ロウを散策後は、アッパースローターとローワースローターに立ち寄りました。ここは、ボートン・オン・ザ・ウォーターから西へ車でわずか5〜10分ほどの場所にある、のどかな田園地帯に佇む小さな村々。まずはローワー・スローターに到着し、そこからさらに小道を進むと、丘の上に広がるアッパー・スローターへと続きます。両村の間にはアイ川(River Eye)が静かに流れ、小川沿いの緑の小道をのんびり歩きながら、コッツウォルズらしい牧歌的な風景を満喫することができます。
▼「アッパー/ローワー」のブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
リバーサイドが美しい「ボートン・オン・ザ・ウォーター」
アッパー/ローワーを散策後はホテルに戻り、朝食が始まる8時までボートン・オン・ザ・ウォーターの町を散策。ここは町の中心を流れるウィンドラッシュ川と石橋の風景が美しく、「コッツウォルズのヴェニス」と呼ばれる人気の観光スポット。カフェ・レストラン・ショップなどが並ぶ川沿いの小道をゆっくりと歩きました。
▼「ボートン・オン・ザ・ウォーター」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
絵本のような丘の上の町「ストウ・オン・ザ・ウォルド」
ホテルでの朝食後、ボートン・オン・ザ・ウォーターをあとにし、「ストウ・オン・ザ・ウォルド(Stow-on-the-Wold)」、「モートン・イン・マーシュ(Moreton-in-Marsh)」、「チッピング・カムデン(Chipping Campden)」、「ブロードウェイ(Broadway)」とドライブしながら人気のヴィレッジを散策しました。
ストウ・オン・ザ・ウォルドは、ボートン・オン・ザ・ウォーターからわずか6kmほどの距離にある町で、「丘の上の集落」という名前が示す通り、コッツウォルズ地方の中でも最も標高の高い町のひとつです。町の中心にある駐車場に車を停め、周辺を散策しました。
▼「ストウ・オン・ザ・ウォルド」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
アクセスに恵まれた町「モートン・イン・マーシュ」
ストウ・オン・ザ・ウォルドを散策後は、約7km北にあるモートン・イン・マーシュへ。ロンドンの北西約145km、オックスフォードからは約50kmに位置し、1853年にオックスフォード・ウースター鉄道が開通する以前は、馬車駅として使われ、現在もアクセスに恵まれた町で、コッツウォルズの玄関口と呼ばれています。
「モートン・イン・マーシュ」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
隠れスポット的な村「ボートン・オン・ザ・ヒル」
モートン・イン・マーシュからチッピング・カムデン方面へは、ボート・オン・ザ・ヒル(Bourton-on-the-Hill) 経由で向かいました。ここは観光客がほとんど訪れないとても小さな集落で、コッツウォルズの静寂なひとときが過ごせる隠れスポット的な村。A44沿いに「ホース アンド グルーム(Horse and Groom)」という1階にパブがある4つ星ホテルがあり、その先のA4479を右折し2kmほど進むとブロックリーの村です。沿道に続く木々のトンネルを走り抜けていくのが爽快でした。
閑静な村「ブロックリー」
近世に絹織物で栄えたという「ブロックリー(Blockley)」。現在は住民が暮らす閑静な村となっています。
コッツウォルズでは、狭い道沿いにびっしりと車が縦列駐車されている光景をしばしば目にします。ブロックリーでも、突然前方から対向車が現れ、ヒヤリとする場面が何度かありました。道幅が限られているため、すれ違いや追い越しのタイミングを見極めるのも一苦労。のどかな風景とは裏腹に、このような場所での運転には気が抜けず、緊張が続きます。
コッツウォルズ北の玄関口「チッピング・カムデン」
コッツウォルズ北の玄関口と言われる「チッピング・カムデン(Chipping Campden)」は、観光地化された華やかさというよりは、しっとりと落ち着いた佇まいの町。チッピング・カムデンから車でわずか数分(南西に約1.5km)の距離にあるブロード・カムデン(Broad Campden)を経由して、チッピング・カムデンに向かいました。ブロード・カムデンは茅葺き屋根の家々が点在するとても静かなヴィレッジ。観光客も少なく、地元の暮らしのリズムがそのまま感じられるような場所です。
▼「ブロード・カムデン〜チッピング・カムデン」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
コッツウォルズの宝石と称される「ブロードウェイ」
チッピング・カムデンを散策後は、南西約7kmの丘陵地帯にある「ブロードウェイタワー(Broadway Tower)」へ向かいました。「コッツウォルズの宝石」と称されるブロードウェイの村は、その歴史的な背景や自然の美しさに惹かれ、多くの芸術家や文化人に愛された場所。観光地としても人気があり、アートギャラリーや紅茶が楽しめるティールーム、ブティックなどが並び、ブロードウェイ・タワーへのアクセス拠点にもなっています。村からタワーまでは、車で約10分(徒歩では約1時間)の坂道を上った場所にあります。
▼「ブロードウェイ村とタワー」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
映画の舞台になった丘の上の美しい村「スノーズヒル」
ブロードウェイの南、なだらかな丘を登った先に現れる「スノーズヒル(Snowshill)」に立ち寄りました。ここは、コッツウォルズの中でも標高の高い村のひとつで、特に美しいラベンダーファームでも知られています。丘の上に築かれた村の中心には、ローカルパブの「スノーズヒル アームス(Snowshill Arms)」と、村民が集う「聖バーナバス教会(St Barnabas Church)」があり、その周囲を蜂蜜色の石造りの家々が静かに囲んでいます。
とても小さな村ですが、静けさと素朴な美しさが魅力。映画「ブリジット・ジョーンズの日記」のロケ地としても知られ、特にファンの間では訪れてみたい聖地のひとつとなっています。
映画では主人公ブリジットが車で走り抜けるシーンに登場するこの通りは、人気の撮影スポットになっています。
土曜の昼下がり、教会前のベンチや芝生ではピクニックを楽しむ人たちの姿が見られ、地域の日常の穏やかさが垣間見えました。赤い電話ボックスと教会が織りなす風景もとても印象的です。ここは賑やかな観光地とは異なる隠れた名所、静けさと素朴な美しさに包まれ、心落ち着くひとときを過ごせます。
教会内部も見学したかったのですが、この時点ですでに14時過ぎ。本来は、お昼にスタントン(Stanton)にある「マウント・イン(The Mount Inn)」で軽くランチをとり、14時頃にはブロードウェイの「ティザンズ・ティールーム(Tisanes Tea Rooms)」でアフタヌーンティーを楽しむ予定でした。マウント・インのL.Oまであと20分…ギリギリ間に合うかどうかというところでしたが、実際のところ、それほどお腹も空いていなかったため、ランチはスキップして先を急ぐことにしました。限られた時間の旅では、どうしても取捨選択を迫られる場面が出てきます。
中世の歴史が色濃く残る「テュークスベリー」
その後、チェルトナムとどちらに行くか迷いましたが、「テュークスベリー(Tewkesbury)」へ向かうことにしました。テュークスベリーは、地理的にはコッツウォルズの北西のはずれにあり、グロスターシャー州北部、セヴァーン川(Severn River)とアヴォン川(Avon Rive)の合流地点近くに位置します。厳密にはコッツウォルズの範囲外ですが、「コッツウォルズ玄関口の町」とも呼ばれ、コッツウォルズ周辺の見どころとして人気の町です。
千年の祈りが息づく歴史と信仰「テュークスベリー修道院」
ここでは、テュークスベリーの一番の見どころである 「テュークスベリー修道院(Tewkesbury Abbey)」を訪問。静けさに包まれ、歴史の重みを感じさせる佇まいで、高さ46mの中央塔は町のどこからでも目に入るランドマークとなっています。
1121年に創建されたという重厚な石造りのテュークスベリー修道院は、保存状態も極めて良好で、ロマネスク(ノルマン)様式の建築がほぼ完全な形で残っている点でも非常に貴重な教会建築です。16世紀に修道院としての機能は終えており、現在もパリッシュ教会として使われているイングランド最大級の旧修道院です。
薔薇戦争の記憶を刻むテュークスベリー修道院の静寂
重厚な石造りのアーチは左右対称の文様が織りなす幾何学美、彩り豊かな美しいステンドグラス、黄金色のパイプオルガン、中世の貴族の墓、石棺、礼拝堂など、教会内部は荘厳な空気を作り出しています。
バラ戦争の「テュークスベリーの戦い(1471年)」の舞台でもあり、戦没者を祀る記念碑もあります。かつて激戦地となったこの地に、今はただ穏やかな時間が流れています。
大聖堂がそびえる古都「グロスター」
テュークスベリーから更に南へと車を走らせ、古都「グロスター(Gloucester)」へ向かいました。グロスターは、イングランド南西部のグロスターシャー州の州都で、セヴァーン川沿いに発展した歴史ある町です。ローマ時代には要塞都市として栄え、中世にはグロスター大聖堂を中心とした宗教と文化の中心地となりました。今も歴史的建造物や古い街並みが残り、港町としての面影を感じられるウォーターフロントエリアなど、見どころが点在しています。
石の扇が広がる神聖な空間「グロスター大聖堂」
町の中心に悠然と佇むのは、約1000年の歴史を誇る「グロスター大聖堂(Gloucester Cathedral)」。映画「ハリー・ポッター」のロケ地としても知られ、多くのファンが訪れる名所でもあります。
テュークスベリー修道院と同様に、グロスター大聖堂も修道院として創建されたのが起源で、678年にその歴史が始まりました。その後、1089年からノルマン様式による大規模な建設が始まり、さらに後期ゴシック様式の華麗な装飾が加えられ、現在もその重厚さと優美さを兼ね備えた壮麗な姿を保っています。
中に入ってまず目を奪われるのは、高い天井に広がる扇形の石のリブ(ファン ヴォールト天井)と、大窓に広がる色鮮やかなステンドグラス。石の建築とは思えないほど繊細な造形と、差し込む光が創り出す幻想的な空間に、思わず息を呑みます。
セント・トーマス礼拝堂「青のラプソディ」
内部でひときわ目を引くのが、セントトーマス礼拝堂(The Thomas Chapel)に設けられた鮮やかなブルーのステンドグラス「ラプソディ・イン・ブルー(Rhapsody in Blue)」。詩篇148篇「すべてのものよ、主を賛美せよ」という主題に基づいて制作され、中央には復活したキリストの姿が描かれています。キャンドルスタンド越しに眺めるその光景は、まさに祈りの象徴です。
ハリーポッターで登場する「グロスター大聖堂の回廊」
グロスター大聖堂の回廊(Cloisters)は、ハリー・ポッターでホグワーツ魔法学校の廊下として撮影に使用され「賢者の石」や「秘密の部屋」などに登場しています。重厚な柱に支えられた美しい幾何学模様の天井とステンドグラスの光が差し込む空間は、まさに圧巻の一言です。
この日はちょうど閉館間際の時間帯で、運よく回廊を独占。静まり返った荘厳な空間を歩いていると、まるで魔法がかかった異世界に迷い込んだかのような、不思議な感覚に包まれました。イングランドの歴史と美が融合したグロスター大聖堂。訪れる価値のある、必見の名所です。
ブラック・ボートン「ザ・ヴァインズ・ホテル」に宿泊
グロスター大聖堂を見学したあとは、コッツウォルズ南西部にある小さな村「ブラック・ボートン(Black Bourton)」へ向かいました。2日目の宿泊先は、この静かな村に佇む「ザ・ヴァインズ・ホテル(The Vines Hotel)」。趣のある古いカントリーハウスを改装した、温もりに満ちたB&Bスタイルの宿です。
ここは人里離れた落ち着いたロケーションでありながら、バーフォードやウィットニー、オックスフォード、スウィンドンなどへの車でのアクセスも良好。コッツウォルズらしい美しい田園風景に囲まれた静かな村で、自然に癒されながら、穏やかなひとときをゆったりと過ごすことができます。
クラシックな内装のロビーとバー
レザーソファが置かれた明るいラウンジは、英国の邸宅の一室にいるようなクラシックな内装でゆったりとくつろげる雰囲気。受付カウンター付近には小さなバーもあります。
スーペリア ダブルルームの客室
客室は全20室。アサインされたのは、2階のスーペリア・ダブルルームでした。室内は十分な広さがあり、洗練された雰囲気でとても清潔。バスルームはシャワーのみでしたが、水圧はやや弱いものの温度は安定しており、快適に利用できました。周囲はとても静かで、朝は鳥のさえずりに包まれて穏やかに目覚めることができました。
The Vine Hotel
Burford Rd, Black Bourton, Bampton OX18 2PF
▶コッツウォルズ・レンタカーの旅②に続く