【コッツウォルズ・レンタカーの旅②】ミンスターラヴェル・サイレンセスター・バーフォードの歴史と暮らしに触れる村巡り

まずは「コッツウォルズ」ってどんな場所?

壮観な田園風景が広がる「コッツウォルズ(Cotswolds)」は、ロンドンの北西約200km、ウィルトシャー・グロセスターシャー・オックスフォードシャー・ウァーウィックシャー、ウスターシャーの5州に跨る約1280k㎡の南東に緩やかに傾斜した丘陵地帯にあり、「ハート オブ イングランド(Heart of England)」などと呼ばれています。

ストラットフォード、オックスフォード、バース、チェルトナムと、主要都市に囲まれたコッツウォルズ地方は、12-18世紀に羊毛加工産業の交易で栄え、この「コッツウォルズ(Cotswolds)」という地名は、古英語の「コット(Cot/羊の囲い)」という言葉と高地を表す「ウォルズ(Wolds/木のない丘陵や高原)」が語源と言われています。

コッツウォルズ地方の特徴である蜂蜜色の建物群は、コッツウォルズストーンとも言われているライムストーン(limestone/石灰岩)でできており、中世時代に建てられたマナーハウス(荘園領主の邸宅)やコテージなど、現在も多くの建物が当時のまま現存しています。この石灰岩は、鋸で切れるほど柔らかいため加工しやすく、空気に触れることで徐々に硬化して耐久性が増すため、質素な家や石垣から教会、領主の邸宅、さらには宮殿に至るまで、あらゆる建築に利用されてきたといいます。

羊とともに石灰岩は、今日のコッツウォルズの礎を築いており、この特有の石材で建てられた民家には、今なお昔ながらの暮らしが息づき、歴史と自然が調和した静かな日常が守られています。

【コッツウォルズの特徴】

  • 古くから羊の放牧地として栄え、17世紀には羊毛の集散地として発展
  • 地元産の蜂蜜色の石灰岩「コッツウォルド・ストーン」でできた石造りの村々が点在、同調的な建物の景観が美しい
  • 英国内でも最も美しい場所のひとつに数えられている
  • なだらかな丘陵地帯の田園風景や四季折々の風景も楽しめる
  • 映画「ハリー・ポッター」のロケ地やピーターラビットの縁の地としても人気がある など

古の遺跡「ミンスター・ラヴェル」

コッツウォルズ3日目の早朝5時半、まだ夜の気配が残るなか「ミンスターラヴェル(Minster Lovell)」へと車を走らせ、早朝の静けさに包まれた「ミンスター・ラベル・ホール(Minster Lovell Hall )」の遺跡を散策しました。

▼「ミンスター・ラベル・ホール」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆

【イギリス・コッツウォルズ】マナーハウスの廃墟「ミンスター・ラベル・ホール」を訪ねて

ヴァインズホテルで味わう英国伝統の朝食

ミンスター・ラヴェルを散策したあとは宿に戻り、広々としたダイニングルームで朝食をいただきました。

ふわふわのスクランブルエッグをはじめ、ベイクドビーンズ、厚切りベーコン、ソーセージ、ハッシュブラウン、焼きトマト、ジューシーなマッシュルームが一皿にぎっしりと盛られた、まさに典型的な英国スタイルの「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」。バーのカウンターには、オートミールやコーンフレーク、トースト、バター、ジャムなどが並ぶセルフサービスコーナーがあります。

レトロなテーブル席なども用意されていて、落ち着いた雰囲気の中、ゆったりと朝の時間を楽しめました。

伝統的な市場町「サイレンセスター」

朝食後、9時前にホテルを出発し、フェアフォード経由でコッツウォルズの中心部に位置する「サイレンセスター(Cirencester)」へ向かいました。

歴史が息づく静かな朝の「マーケットプレイス」

約30分ほどでサイレンセスターのマーケットプレイスに到着。ここは11世紀から続く、イングランドでも最古級とされる伝統的な市場の開催地(開催日は第2・第4土曜日)です。サイレンセスターは、古代ローマ時代には「コリニウム(Corinium)」と呼ばれ、ブリテン島ではロンドニウム(現ロンドン)に次ぐ規模の都市だったとされています。

「コッツウォルズの首都」とも称されるこの町には、現在もローマ時代の遺構や博物館が充実しており、町の中心にはマーケットプレイスや中世の教会、チューダー様式や石造りの美しい建物が並ぶ、魅力的な街並みが広がっています。

訪れた日曜日の朝は人もまばらで、石畳の広場はひっそりとした静かな時が流れていました。

空を翔ける使者が舞う「聖ヨハネ・バプテスト教会」

サイレンセスターの「聖ヨハネ・バプテスト教会(Church of St. John the Baptist)」は、12世紀に創建され、イングランドでも最大級のパリッシュ教会のひとつ。現在の壮麗な姿は、15世紀に大規模に再建されたゴシック様式の教会です。

教会の鐘が静かに町に響き渡るなか、空高く旋回する鳥たちの姿がありました。その鳥は一見すると鳩のようにも見えますが、実はこの教会の塔に棲み着いた野生のハヤブサで、長きにわたり人々の営みと祈りを見守ってきたといわれています。

古来より神と人の間を結ぶ象徴ともされたハヤブサ…。天空から地上を見渡し、世の営みを神へと届けているのでしょうか。その思いがけない神々しい光景に、身震いがしました。

ミサの時間に重なっていため教会内には入れない状況でしたが、ラッキーなことにちょうどタイミングよく聖堂係の方が扉を開けて現れ、思いがけず礼拝堂の中へと足を踏み入れることができました。

中世の祈りの記憶を宿すチャペルや古の墓所が静かに佇む中、荘厳なミサが始まり、透き通る聖歌の響きとともに香炉から立ち昇る乳香の煙が、人々の祈りを天へと運ぶかのように光の中をたゆたっていく…。神聖な空気に包まれ、胸が熱くなるようなひとときでした。

歴史の街角に溶け込むコーヒースタンド

聖ヨハネ・バプテスト教会前の広場に佇んでいたのは、クラシックなシトロエンHYバンを改装したおしゃれなコーヒースタンド。歴史ある町並みにしっとりと溶け込み、地元の人々が穏やかな週末の朝を楽しむ様子は、まるで絵画の一場面のようでした。

珈琲を飲みながら、響き渡る教会の鐘の音に耳を傾け、青く澄み渡る空を優雅に舞うハヤブサたちを眺めていたら、自然と心が癒やされ、胸の奥からじんわりと力が湧き、ワクワクした気持ちが広がっていくのを感じました。旅の途中でホッと一息つける、心和むスポットです。

アートとマーケットが息づく「コーンホール」

サイレンセスター中心部のマーケットプレイスに建つ「コーンホール(Corn Hall)」(営業時間:10:00〜16:30)は、19世紀に穀物取引所として建設された歴史的建造物。現在はそのクラシックな外観を保ちながら、地元アーティストによる展示やクラフトマーケット、アンティークフェア、地域イベントなどが開催され、思いがけない出会いや地域文化に触れられる、魅力あふれるスポットとなっています。

ヴィンテージ品が豊富な「サイレンセスター アンティーク センター」

「サイレンセスター アンティーク センター(Cirencester Antiques Centre)」(営業時間:月〜土9:30〜17:00、日・祝11:00〜16:00)は、コーンホールの向かいにあるアンティーク専門店。2階建ての建物内に複数のディーラーが出店するスタイルで、家具やジュエリー、陶磁器、ガラス製品、絵画など英国らしいヴィンテージ品が豊富に並び、見て歩くだけでも楽しめるスポットです。

中世の風が吹き抜ける交易の町「バーフォード」

サイレンセスターをあとにして、旅の締めくくりに訪れたのは、コッツウォルズ北東部に位置する「バーフォード(Burford)」。バーフォードは、古くから交易の町として栄えた町で、中世から続く石造りの家々が並び、風情ある町並みを楽しむことができます。

暮らしのセンスが詰まった「バーフォード・ガーデン・カンパニー」

バーフォードで立ち寄ったのは、コッツウォルズのローカルライフを垣間見ることができる園芸店「バーフォード・ガーデン・カンパニー(Burford Garden Company)」。ここは植物や園芸用品だけでなく、家具、インテリア、キッチン用品、食品、アート、子ども用品、雑貨など幅広い商品を扱い、カフェ・レストランも併設された大型のライフスタイルショップです。

コッツウォルズに暮らす人々の感性やライフスタイルに触れながら、お土産探しやランチタイムをゆったりと楽しむことができました。
ロンドンに戻る前のギフトショッピングや時間調整にもぴったりの便利なスポットです。

あとがき

素朴な田園風景に響き渡る鳥のさえずり、自然と美しく調和する蜂蜜色の歴史的建物の数々…。今もなおコッツウォルズの古の姿をそのままにとどめているとは、まさに奇跡のようです。保存状態の良さが文化遺産としての価値をいっそう高めているのだと感じました。

今回の旅は訪問箇所が多く、思いのほか散策時間がかかったこともあって、予定していたティーハウスやマナーハウスでのアフタヌーンティー、人気パブでの食事など、行けなかった場所もいくつかありましたが、コッツウォルズの美しい風景を存分に味わえたことは、何にも代えがたい時間となりました。

数百年の時を経た歴史ある建物が多いため、コッツウォルズの宿泊施設にはエレベーターがないのが一般的で、水回りの設備もやや古めです。水回りの不便さについてはある程度想定していたものの、エレベーターがないことは失念しており、重いスーツケースを持って階段を上がるのは予想以上に大変でした。また、備品はリキッドソープ、ヘアドライヤー、ケトル、タオル類など必要最低限のものに限られるため、持参したスリッパやアメニティが役立ちました。

レンタカーでの移動で何より驚かされるのは、現地の車のスピードです。片側一車線の狭い道路でも時速80〜100kmは当たり前で、遅い車は容赦なく追い越されます。特に早朝や夕方以降の暗い時間帯は視界が悪くなるため、より一層慎重な運転が求められます。

コッツウォルズの中でも特に小さい村々は携帯の電波が届きにくいので、カーナビを利用しない場合は、事前にオフラインマップをダウンロードしておくことをおすすめします。また、駐車場料金の支払いも、基本的に現金は使えないと思っておいたほうが無難です。駐車料金に限らず、バスや電車などの公共交通機関やスーパーでの買い物など、イギリスでは現金よりもカードが主流です。

小さな困難もありましたが、それ以上に得られた風景や出会いが、コッツウォルズでの旅をかけがえのないものにしてくれました。

▶▶コッツウォルズ・レンタカーの旅①に戻る