【山形・尾花沢】幻想的でノスタルジックな温泉街 – 雪の残る「山形・ 銀山温泉 」

山形県尾花沢市にある「銀山温泉」は、山あいにひっそりと佇み、今も大正時代の面影を残すこじんまりとした温泉街。銀山川に沿って大正ロマンのノスタルジックな町並みが広がり、レトロな木造旅館が軒を連ねています。ガス灯が優しく灯る夕暮れ時は一層幻想的な光景が広がり、そこはまるで別世界!今回は、この魅力的な「銀山温泉」の旅ブログです。

いざ山形「銀山温泉」へ!

銀山温泉までは、飛行機(山形空港からバス・ライナー)、JR・高速バス(大石田駅から路線バス・タクシーまたは宿泊先の送迎バス)、車(東北自動車道→尾花沢バイパス→国道347号(母袋街道)→県道29号および県道188号)などのアクセス方法があります。

今回私たちは、銀山温泉訪問の前日は山形市内に滞在したので、山形駅から在来線を利用し大石田駅へ向かいました🚃 

▼銀山温泉公式サイトマップ

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哀愁漂うローカル電車の車窓から眺める白銀の世界…山形駅から北に向かうにつれて雪深い風景に変わっていきます。

山形駅8時42分発の在来線(JR奥羽本線・新庄行)に乗り、9時31分に大石田駅に到着。約50分の乗車時間は、移りゆく雪景色を見ているとあっという間です。

宿泊先の送迎バスは午前中早めの便がないので、銀山温泉行きの路線バス(はながさきバス/710円)の第1便(大石田駅9:50発)を利用しました。

バスに揺られること約35分、終点の銀山温泉バス停留所(銀山荘前)に到着!(途中、運転手さんがスタンドで給油するという何ともマイペースな行動に乗客がオオウケ!などという場面も…)

バスを降りると辺り一面雪景色でした。高台から銀山温泉街を一望することができ、この素晴らしい眺めにテンション上がります!1983年から1984年、NHK連続ドラマ小説「おしん」の舞台になったという銀山温泉。「おしん」の世界はこんな感じだったのでしょうか?!

緩やかな坂を下れば銀山温泉街入口まですぐ。まずは、白銀橋を渡ったところにあるインフォメーションで、銀山温泉の情報収集です。

銀山温泉の歴史

銀山温泉は、かつて江戸時代初期の大銀山として栄えた「延沢銀山」の名称に由来。

1456年に「延沢銀山」が発見され採鉱が始まる(1631年銀山の最盛期)。江戸時代の中期になると産出量が減少し、1689年の坑道崩落をきっかけに閉山。

1741年頃から宿が増えはじめ温泉地として栄える。1913年の大洪水によって温泉街も一度壊滅したが、地元財界の力で復興。1926年(昭和元年)には、源泉のボーリングで高温多量の湯が湧出し、各旅館が平屋の宿から一斉に洋風の高層木造構造に建替え、橋や沿道の整備も進み、現在に至る。

銀山温泉の日帰り入浴

銀山温泉には「銀山荘10:00-14:00/露天風呂、旅館松本11:00-14:30、古勢起屋11:00-14:00(各500円)」「瀧見館/露天風呂(600円)」のほか、入浴応相談の「酒田屋/湯治可、昭和館/天空風呂、御宿やなだ屋、旅籠いとうや/露天風呂」など、日帰り入浴が可能な宿(都合により不可の場合があるので要確認)と、「しろがね湯(8:00-17:00/500円)」「かじか湯(8:00-19:00/300円)」「おもかげ湯(貸切浴場10:00-17:00/50分2000円)」3ヶ所の共同入浴施設があります。

日帰り観光客が押し寄せるお昼以降は混むので午前中に入るべしとのこと。銀山温泉の宿泊者は、しろがね湯とかじか湯が無料で利用できるというので、早速「しろがね湯」に入りました。湯船は小さめで熱めの湯、細かな湯の花が浮かぶナトリウムー塩化物・硫酸塩温泉で、体の芯まで温まりました。ちなみに「しろがね湯」は建築家「隈研吾氏」によるデザインだそうで、小さいながら三角形のモダンな建物です。

銀山温泉の食事とカフェ

「伊豆の華」と「滝見館」のそば処、名物カリーパンのある食事・喫茶店「はいからさん通り」、立ち食い豆腐の「野川とうふや」、カレー・ハンバーグがおすすめという古勢起屋別館の「すわろうネ」、貸衣装もやっているというカフェ「あいらすげーな」、カフェ・ランチ・お酒のある酒茶房「江戸屋・クリエ」など、いくつかの食事処とカフェがあります。

銀山温泉の散策コース

季節を問わず楽しめそうな銀山温泉。でも残念ながら雪深い冬季は延沢銀山の跡地「延沢銀山坑道」には入れないとのこと。3月初旬は降雪もあるし、まだまだ山には雪が積もってますからね。冬は雪の温泉街が楽しめますが、夏の散策コースもウォーキングしてみたい。

※銀坑洞の見学は無料で、歩道橋、照明設備が整い、浴衣姿でも坑内を一巡りできるとのこと。夏場でも20度以下のひんやりしているそうです。

【満喫コース(約1.9km/約60分)】温泉街→白銀の滝→せことい橋→夏しらず坑→銀坑洞→儀賀市郎左衛門像→滝の不動尊→山の神神社→温泉街

【おてごろコース(約1.4km/約40分)】温泉街→白銀の滝→せことい橋→夏しらず坑→銀坑洞→温泉街

【お散歩コース(約0.8km/約20分)】温泉街→白銀の滝→せことい橋→コウモリ穴→鬼子母神→温泉街

大正ロマンの風情漂うレトロな銀山温泉街を歩く

「しろがねの湯」で冷え切った足を温めたあとは、いよいよ銀山温泉街の散策へ!(白銀橋より先の温泉街は、一般車両通行禁止となっています。)

手作りのお豆腐「野川とうふ店」

白銀橋すぐそばの「野川とうふ店」に手作り豆腐の魅力的なメニューの看板が。。。引き戸を開けると、普通のお家の玄関先に小さなカウンターがあり、呼び鈴を押すとお母さんが出てきて注文を聞いてくれる。その後再びお母さんがプラスチック容器に醤油のかかった豆腐を入れて持って来てくれるというアットホームなお店。

冷たい「立ち食い豆腐」と温かい「立ち食い生揚げ」を店前の足湯で銀山川を眺めながらいただきました。豆腐自体はあまり大豆っぽさがなくサラッとした味わいですが、柔らかくてフルフルの食感!外側がカリッとして、中はフルフルふわっとした温かい生揚げ、美味しいです!

山の斜面にはたくさんの雪が積もっているように見えますが、この程度の積雪は地元の方にとっては大したことがない様子。ここ2,3年は積雪量が少なく、特に今年は極端に降雪が少なかったそうです。

足湯「和楽足湯(わらしゆ)」

白銀橋のすぐそばにある源泉をそのまま使用した足湯。散策で疲れた足を足湯で癒すも良し、冬場の冷え切った足を温めるも良し!足湯から見る積雪風景と銀山温泉街を眺めながらほっこり癒されます。

銀山川の両岸には大正ロマンの木造高層旅館が並ぶ

大正末期から昭和初期(1926年頃)に建てられた洋風高層階の木造旅館が銀山川の両岸に沿って軒を連ねています。

大正時代の雰囲気を伝える思想や文化についていわれれる「大正ロマン」(大正浪漫と書いたのは夏目漱石が始まりだとか)という言葉。そのイメージを簡単な言葉に置き換えるならば「和洋折衷」?!

西洋の華やかで合理主義的な洋の文化と、日本の静かで情緒的な和の文化、その異なった文化の絶妙な組み合わせが「大正ロマン」そんな風に思います。

「大正ロマン」の建築も、一見洋館のように見える建物や応接室などの洋間と、居間や寝室などのような和の融合。(西洋文化の憧れから、人をお出迎えする場所は洋テイストが濃くなり、普段の生活空間はやはり和みやすい和の畳部屋に。という風潮だったのでは?!)そこに腰壁、格子窓、欄間窓、照明、造作建具などなど、洗練された細やかな装飾デザインが施され、和と洋の文化が見事に融合したのが「大正ロマン」の魅力、というところでしょうか。

「大正ロ浪漫」とは、大正時代の独特な文化に憧れを込めてつくられた言葉!この絶妙な文化のセンスを理解した上で、大正ロマンの雰囲気を楽しむのがこの銀山温泉の醍醐味でしょう!それぞれ宿の装飾を見て歩くのも楽しいです。

「古山閣」木造4階建ての外壁には色鮮やかに年中行事などの「鏝絵(こてえ)」が描かれています。造り酒屋の建物(1915年/大正4年築)を利用しているそうでどっしりとした風格のある宿。真っ白の漆喰壁と木の格子窓がなんといえない風合いです。

「古勢起屋別館」川側の建物は大正時代に建てられた4階建ての木造建築で、山側は5階建ての鉄筋コンクリートづくりという2構造の宿。今回お世話になった宿です。

「小関館」ひと際年季の入った風情ある佇まいの宿。現在は休業中の模様。(小関館は、古勢起館別館と同じく銀山荘系列の宿)奥に見えるのが銀山の麓で白銀公園や白銀滝があります。

「能登屋旅館」木造3階建の上に2層の望楼がある奇抜な宿(1925年/大正14年築)。創業者「木戸佐左ェ門」の名が記された鏝絵の柱が印象的です。(銀山温泉の古い旅館には創業者の名前が玄関先にかかれているのが見受けられます)

いくつもの橋がかかっている銀山川沿いの温泉街ですが、白銀橋から「喫茶クリエ」あたりまでは、わずか180mほど。見どころがたくさんあり時間をかけて回りましたが、短時間滞在でも楽しく見て回ることができそうですね😊

散策中に見つけた、デザインのかわいいご当地サイダー「ラ・フランスサイダー」と「スイカサイダー」。このほか、サクランボやパインのサイダーもあります。山形はフルーツ王国ですからね。ちなみに尾花沢の夏スイカは生産量が日本一だそうです。

夜は部屋の縁側で、ガス灯が灯る温泉街を眺めながらお酒を楽しもう!ということで、地酒「なまいき」と「上喜元」も購入(ほぼ名前だけで選びました)。なまいきは、生意気じゃなくて「生が活きてる」のなまいきだそうです。

銀山温泉名物と言われる「はいからさんのカリーパン」

店内はラーメン、そば、カレーなどの食事処、またクリームあんみつやあんこ餅などの甘味処になっています。ちょうど小腹が空いてきたので、銀山温泉の名物と言われるカリーパンをいただきました。連休には長蛇の列ができ、1日で数百個が売切れてしまうという名物カリーパン(カリーだそう)です。

外側がカリッと揚がったふんわりパンにフルーティーでマイルドな辛さのカリーパン、人気になるだけあって美味しい♪レジ前に並んでいた「くぢら餅」という見たことのない大きな桜大福と古代米で作られた「ずんだ大福」もいただきました。

滝と蕎麦の宿「瀧見館」

11時から14時まで日帰り入浴が利用できる宿。「滝見館」というそば処があり、尾花沢産の蕎麦粉を使った、挽きたて・打ちたて・茹でたての蕎麦が食べられるのだそう。露天風呂の入浴付きで50食限定の「蕎麦昼食」が人気だとか。残念ながらすでに売り切れでした。

看板をよく見ると、そば処は「滝見館」(宿は「瀧見館」)となってます。いずれにしても、宿からと、そば処からと、どちらからも滝が見れるのでしょうね。冬季はまだ裏山の散策コースは閉鎖中ですが、案内所によると冬でも白銀の滝を正面から見れるという情報。ここでいいのかな?!と思いながら、橋を渡り滝見館の建物内に入ってすぐ右側の階段を登ってみると…

まさに白銀の世界に囲まれた「白銀の滝」

裏山の中腹から白銀公園全体が見渡せました。白銀の滝もよく見えます!

約20メートルほどの高さから雪解け水が流れ落ちていく…静けさの中で鳴り響く滝の音、優美な心安らぐ風情です。

白銀の滝の後方に見える赤い橋「せとこい橋」には、まだ雪が積もっています。

1952年創業「伊豆の華」

太い梁が4本天井に入り、昔からの風情を残した店内。130年の歴史ある古民家を再利用し、2010年に温泉街に新装オープン(以前は銀山温泉の入口で営業)したそうです。

ゆっくり散策していたらすでに2時を回っていてお腹ぺこぺこ。白銀橋の方に戻り、「伊豆の華」で蕎麦とスイーツをいただこうと思ったら、11時ー15時のランチタイムは「そば処」、15時ー18時は「カフェ」、18時ー22時は「酒処」というように、時間によってメニューが区切られています。

2階の特等席(銀山川を正面に眺めることができる)はすでに先客がいたので、横のカウンター席へ着席。この日は午前中からずっと地元TV?の撮影がおこなれていて、たくさんのTVクルーが忙しく歩き回ってました。

注文したのは人気NO.1の「揚げナスおろしそば」、大根と青菜が入った「おしん飯」。揚げなすも美味しいけど、こだわりの蕎麦が美味しい!「どんぐり挽き」という製法で挽いた尾花沢産のそば粉(最上早生)で作られたという「十一割そば」が楽しめます。

【古勢起館】銀山川と温泉街を見渡せる川沿いのお部屋

遅めのランチのあとは予約済みの宿「古勢起館別館」にチェックイン。唐破風の玄関が素敵です!

当初は両替商として開業、その後は造り酒屋と醤油屋を商いとし、天保年間(江戸時代後期)から「古勢起屋(こせきや)」の屋号で湯治宿を開業されたのだそう。(現在は銀山荘の経営により運営)1Fに和風モダンスタイルのカリーハウス、喫茶「すわろうネ」があります。

客室は川側2階中央の202号室で、趣のある書院造り。2間続きで広々とした落ち着きのある空間です。入り口に洗面はありますが、バス・トイレはついていません。部屋にはタオル類、浴衣一式(足袋靴下つき)が用意してあります。

障子を開けると縁側、格子戸を開ければ念願の温泉街の光景が!なんといっても銀山川側の客室が最大の魅力!用意されていたお茶菓子をいただきながら、しばし温泉街の眺めを堪能します。

目の前は共同浴場の「かじか湯」。浴衣を着て外湯めぐりを楽しむのもいいですね。

中居さんの案内で、姉妹館「銀山荘」の温泉まで、送迎車(16時半から18:00まで30分毎・乗場は白銀橋付近)が出ているというので、16時半のバスに乗って銀山荘へ。広めのお風呂で、寝湯もあり、雪見露天風呂は最高です!(お風呂上がりはロビーのソファー席でコーヒーや紅茶のセルフサービス(無料)も利用できました。)帰りの温泉街までは下り坂なので歩いて宿へ。

※古勢起館のお風呂は内湯が2つで、ひょうたんの形をした「ぬっくりの金太郎湯」(浴槽が仕切られていて、奥の湯船は源泉のため湯)と、半地下にある「ほっこりのちか湯」。どちらもこじんまりとした(8〜10人くらいまで?)小さめのお風呂ですが、源泉かけ流しでいつでも新鮮な湯が湧き出てくるのは気持ちがいい。男女入替制(8時と20時)なのでどちらのお湯も楽しめます。

山海の旬の素材を盛り込んだ和食膳の食事

温泉でひとっ風呂浴びたあとは、旅館の美味しい夕食。山海の旬の素材を盛り込んだ、暖かみのある和食膳です!

ハート型の酒器がかわいらしい。厚切りの本鮪とハマチの刺し身と、霜降りの山形黒毛和牛ステーキが最高!カリッと揚がった鰰(さかなへんに神でハタハタと読むのですね)の甘酢がけも美味しかったし、どれも大満足の美味しさ!真心伝わりました♡

朝食もイカの刺身、温泉卵、焼鮭、のり、煮物、佃煮、蒸し豚、おしん飯、味噌汁、そして最後はお抹茶付きのデザートと、朝から豪華なメニューです。 ごちそうさまでした😋

ガス灯が灯る夜の銀山温泉

外はすっかりと日も落ち、ガス灯が灯り、旅館の各部屋にも明かりがともり、街全体が暖色系に染まっています。

この美しい眺めを肴に地酒「なまいき」を一杯ひっかける。目を閉じれば大正ロマンに生きた人々の光景が浮かぶ。。。しばし時空間移動を楽しむ至福のひとときです。

2階の縁側から眺める風景。斜め向かいの「旅館永澤平八」と「能登屋」の連なるお宿がまるでジブリ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋ですよ!

実際、銀山温泉が千と千尋の神隠しをモデルにしているのではないかとも言われているようですが、真相は単なる噂?!(日本の各地から「うちが千と千尋のモデルじゃないか?」という声があるのだそう)いずれにしても、この世界観は、千と千尋の神隠しの雰囲気そのものです!

右の向かい側には江戸時代から続く老舗旅館「藤屋」のお宿。大正時代に現在の木造3階建となり、2006年に古い建築物をそのまま活かしながらリニューアルされたのだとか。「しろがね湯」同様に建築家「隈研吾氏」によるデザイン(浅草・浅草寺前に建つ8階建ての「浅草文化観光センター」が地元では有名)。夜の明かりの風合いが素敵です。

夜の銀山温泉街をそぞろ歩く

お酒を一杯ひっかけたあとは、浴衣姿で夜の銀山温泉をそぞろ歩く。昼間の顔とはまた違った幻想的な風景が広がる…古き良き大正時代に舞い降りたような感動に、寒さなど吹き飛んでしまいます!

昼間は控えめだった脇役のガス灯が、夜になると華やかな主役に大変身。

ガス灯に照らされて浮かび上がる朱塗りの橋がまた良い味を醸します。

寒空の下、優しいガス灯の灯りが心を温かく包み込み、非日常の世界へと誘います…

山形の奥深くで栄枯盛衰を繰り返してきた銀山温泉…季節ごとに移ろいゆく銀山温泉…

期待以上の素晴らしい旅ができました。ありがとう!また逢う日まで!!

銀山温泉公式サイトはこちら