【九州・長崎】世界遺産「軍艦島(端島)」を深く知る! 「軍艦島デジタルミュージアム」体験レポ

「軍艦島デジタルミュージアム」へGO!

軍艦島上陸クルーズに参加した翌日、軍艦島デジタルミュージアムを訪問しました。こちらは日本の近代化を支えた炭鉱島「軍艦島(端島)」の歴史と、世界一の人口密度となった軍艦島の暮らしや文化を最新のデジタル技術で体験できる施設です。

軍艦島デジタルミュージアムまでのアクセスは、路面電車の場合は長崎電気軌道「大浦天主堂」(JR長崎駅より約20分)下車徒歩1分、バスの場合は長崎駅前南口から長崎バス30番or40番に乗車し「グラバー園」下車徒歩1分。今回は車だったので、軍艦島デジタルミュージアム前の「長崎市松が枝町駐車場」を(地下駐車場40台)利用しました。ミュージアム専用もしくは提携の駐車場はありません。

ちなみに入館料はアソビューアプリでデジタルチケット×2を事前購入。2時間の駐車料金分安くなってラッキーでした。割引サービス など事前にチェックしてみると良いですね。

営業時間:9:00 ~ 17:00(最終入館16:30)当日限り再入館可能
入館料 :一般1800円 中・高校生1300円 小学生800円 幼児500円 3歳未満無料(団体割引有)
休館日 :不定休

1F受付前にカフェがあり、入館時にもらえた割引券で自家焙煎珈琲をいただきました。

2〜4階が観覧フロアで上の4階から順に見学することに。ミュージアム内の階段は、かつての軍艦島の風景を切り取った写真で囲まれ、美術館みたいな空間で素敵です。

※事前に公式ページのコンテンツ紹介でフロアマップをチェックした際、4FにVRがあったので混む前にと最初に向かったのですが、コーナーがなくなっていてがっかり。と思っていたら3階に移動してました。公式ページのフロアマップは2024年11月現在最新ではなかったのでご注意を…

軍艦島デジタルミュージアム4階フロア

4階には、端島銀座を再現した「地獄階段」やコスプレコーナー、軍艦島を5面LEDディスプレーで観る「立体シアター」、模型やパネルを使った「軍艦島日給社宅」、軍艦島の頂上に鎮座していた「端島神社」の再現セット、軍艦島のゆるキャラ「ガンショーくんルーム」などの展示があります。

大迫力の「立体シアター」

5面LEDディスプレイによる「立体シアター」は、海に浮かぶ軍艦島を沖合から観る映像から立入禁止区域の内部の建物まで、立体映像が迫ってくる大迫力の映像!シアターの床部分に立つことができて没入感満載です。

左写真中央(65号棟・コの字型の中庭)に見える光った物体が一体何だったんだろうと気になったので後日調べてみたら、草に埋もれたコンクリート製のスロープだったことが分かりました。

はじめ木造の炭坑長屋が並んだ木造住宅だったという65号棟の中庭は、1958年に住宅を撤去して端島公園を設置。現在は滑り台やブランコなど鉄製の遊具は潮害によってすべて崩れ落ちてしまい、唯一木製だったシーソーのかけらやコンクリ製の遊具だけが残っているようです。

「日給住宅(16〜20号棟)」の模型

「日給住宅(16号棟〜20号棟)」は、細長い5棟の建物が海側の大廊下で繋がったクシ状の建物。1917年から順次建設され、時代に先じて各棟にはダストシュートを設置、1966年には屋上に青空農園まで造られたそうです。

また、日給住宅1階の16号棟には洋品店(質屋)、雑貨店、文具兼書店、電気屋、外勤詰所、17号棟には中華料理屋、ビリヤード場、18号棟には厚生食堂、20号棟には果物屋、八百屋などの商店街があったといいます。

左写真は16号棟北側の壁と端島神社に続く地獄段。長くて複雑な階段は途中で息切れするほどだったことから「地獄段」と名付けられた階段は、56号棟東側の一直線の階段「五十段」と共に主要通路階段。右写真は16〜18号棟の屋上に造られた屋上庭園と19号棟の弓道場。

左写真は目抜き通り(日給住宅北側)の端島銀座。ここでは連日青空市場が開かれ、対岸の港からきた行商人が魚や野菜などを売りに来ていたのだそうです。

中央右寄りの階段横の柱のようなものは各フロアに設置されたダストボックスからいつでもゴミが捨てることができた筒状のダストシュート。ちなみに1階に落ちたゴミは自動的に集積され、リヤカーで島内を周るゴミ当番によってメガネと呼ばれた場所から海へ投棄されていたのだとか…。(その後1973年ゴミ処理場が完成)

右写真は南側から見た19号棟と20号棟(屋上の赤い屋根は、消防夫独身長屋)。大きな岩が建物を飲み込んでいるかのように見える険しい場所に建っているのが分かります。

「端島神社」の模型と再現セット

上写真2枚は日給住宅模型の端島神社。下写真は地獄段奥のスペースに設置された端島神社の再現セットと、ミュージアム内の階段の壁画で見られる端島神社の写真。

岩礁北端の頂上の鉄筋コンクリートと人工地盤で造られた境内に鎮座していた端島神社は、海の神・金毘羅様と山の神・大山祇神など3柱(1柱は不明)の神様を祀っていたという端島で唯一の神社。現在残っているのは地盤・鳥居の一部と本殿だけのようで、岩礁の頂上にある本殿は軍艦島クルーズツアーの船上からもきれいに観ることができます。

軍艦島のゆるキャラ「ガンショーくんルーム」

「ガンショーくんルーム」は、軍艦島のガンショーくん(頭に軍艦島を乗せた岩礁という設定)を生み出したクリエイターの紹介。原画やCMの撮影で使用した人形や背景セットを展示するほか、パチンコ台や1958年頃流行ったヒーローグッズなどが並んでいます。

軍艦島の歴史を説明したアニメ動画「軍艦島のガンショーくん」は簡潔にまとまった入門者にとてもわかり易い動画。ユーチューブでも見ることができます☆

ロケ地・軍艦島の「メディアコレクション」

「メディアコレクション」は、軍艦島を舞台とした作品やロケ地として使用された映画などを紹介しているコーナー。軍艦島デジタルミュージアムを訪問した翌日に「海に眠るダイヤモンド」というドラマが始まることを知り大興奮でした!

後日Tverで1話目を観たのですが、端島銀座や厚生食堂をはじめ島内の色々なシーンを見ることができ、またストリーの内容もとても面白いです。軍艦島という島をより身近に感じるようになりさらに興味が深まりました。

軍艦島デジタルミュージアム3階フロア

3階フロアは、元島民の写真などで構成された「軍艦島の表情」、1/150の軍艦島ジオラマのプロジェクションマッピング「シマノリズム」、1/30の「30号棟模型」と30号棟に関する紹介や元住人のインタビュー映像、島で実際に使われていた「当時の品々」の展示、軍艦島・立入禁止区域(2021年の様子)をVRで体験できる「2021版軍艦島VR」、学校の体育館が倒壊していく過程を模型や写真などで説明した「崩れゆく軍艦島」等々、軍艦島の歴史や文化、そして現在の状況などがよくわかるコンテンツが満載です。

※軍艦島VRは混み合っていると思いきやVR機器が多めに用意されていたので待たずにすぐできました。

国内最古のRCアパート「30号棟」の模型

軍艦島の南端にある7階建ての「30号棟」は、1916年(大正5年)に建てられた日本最古の鉄筋コンクート造りの高層アパート。鉱員のための住宅として建設され(その後は下請業者の飯場として閉山時まで使用された)、100年以上の時を経て現在もかろうじて立っている興味深い建物です。こちらのコーナーでは「1/30の模型」やパネルなどによって30号棟の詳細を紹介しています。

炭鉱労働者の増加に伴い狭い島内での効率的な居住空間の必要性、また台風など風水害に対する耐久性や防火対策といったより安全な建物の必要性に応じて造られた30号棟は、随所に工夫が見られ、特に光を採り込むために建物の中央に造られた四角い吹き抜けの中庭がユニーク。中庭を囲むように周囲をまわる階段が設置されており、その構造や部屋の様子などが模型で見られるようになっています。

光を採り込む工夫がなされた建物でも、実際に日が差し込むのは4階以上で、下層階は1日中電灯が必要で雨の日なども水浸しになって大変だったそうです。

雨風に晒され続けた30号棟のアパートは、現在益々劣化が進んでいる状況。2016年の建築時と、2021年時の建物の模型があり、その新旧の模型によって近年の崩壊具合の激しさがよく分かります。

軍艦島崩壊の危機と研究者たちの挑戦

崩壊しつつある建物群があとどれくらいもつのだろうかというのは気になるところ…。と思っていたら、「軍艦島崩壊の危機と研究者た日の挑戦」というコーナーに「居住施設遺構の劣化度区分図」という図説がありました。

残念ながら30号棟は、2016年時点で大破または余耐用年数予測がマイナスの劣化度5で補修対象から外れており、いつ倒壊してもおかしくない状況。また、島内に劣化度1の崩壊が見られないという居住施設はもはやなく、劣化度3〜5の建物が目立ちます。居住施設遺構の保存計画では、大正期に建設された16・17号棟、島の景観維持のために必要な3・65・70号棟の5棟を優先的に整備予定とあります。(2016年5月に刊行された長崎新聞の記事より)

鉄筋が腐食しやすい悪条件の中で、廃墟感の景観を保ちつつ、劣化の進んだRC造建築を保存するには相当のコストと技術力を要するようです。

劣化度調査に関するユーチューブ「軍艦島 劣化度調査に密着!崩壊寸前?ツアーでは入れない内部をコンクリートの専門家と歩く(2023年11月)」の案内があったので後日拝見しました。上陸ツアーでは一部ルートのみの見学で、建物が立ち並ぶ内部は一般人の立入が禁止となっていますが、こちらのユーチューブ動画は専門家の方が軍艦島の内部映像と共に建物の状態をとてもわかり易く解説している大変貴重な映像。必見です!

軍艦島デジタルミュージアム2階フロア

2階は「軍艦島歴史パネル」をはじめ、炭坑の坑道内を再現した「採炭現場への道」、軍艦島アーカイブスをもとに制作された作品の「映像ギャラリー」、1950年代後半頃を再現した部屋「軍艦島のアパートの暮らし」、映像コーナーや写真を展示しているギャラリースペースなどがあるフロア。時間があればすべての映像をゆっくり見てまわりたい…。

軍艦島歴史パネル

2階へ向かう階段を上がったところにあるのは、軍艦島の歴史や概要がわかる基礎知識的な入門編のパネルコーナーです。

「採炭現場への道」と「軍艦島のアパートの暮らし」

炭鉱の坑道の内部を再現した「採炭現場への道」(左写真)は、炭坑に関する説明を見ながらトロッコやエレベーター(ケージ)に乗っているような体験ができるコンテンツです。

ちなみにケージと呼ばれたエレベーターは、東京スカイツリーほどの高さがある海底まで約80秒(秒速8mというものすごい速さ。スカイツリーのエレベーターは秒速10m。)で降下したそうで、それは降りるというより落ちる感覚の怖い乗り物だったとか。そこからトロッコで移動し、傾斜角度21度という人車に後ろ向きに乗って更に深い(最長-1010m)採炭現場に向かったといいます。

右写真は1950年代後半頃を再現した部屋「軍艦島のアパートの暮らし」。当時はこの六畳一間に1家族が生活していたとのこと…部屋の中に入ることもできました。

映像と写真展示の「ギャラリースペース」

2階奥の広い空間には、4つの映像コーナーや坑内からアパートの外観、部屋の中など廃墟と化した軍艦島内の数々の写真が展示されているギャラリースペースがあり、上空からドローン撮影された軍艦島の全体写真なども見られました。

暗めで静かな空間なので、リラックスして軍艦島の貴重な写真や映像を観ることができます。


軍艦島デジタルミュージアム
長崎県長崎市松が枝町5-6
095-895-5000

あとがき

軍艦島デジタルミュージアムで見学した時間は約2時間。いくつかの映像しか見ることができませんでしたが、元島民のインタビューや軍艦島の詳細映像など、ゆっくり見ていたら半日以上かかりそうな見応えのあるミュージアムです。

最新のデジタル技術によって軍艦島をより身近に理解することができ、特にVR体験では現在の建物の状況を立体的に捉えることができ、より理解が深まりました。また緻密につくられているジオラマなども、かつての島民たちの暮らしを垣間見ることができて、とても良かったです。

軍艦島デジタルミュージアムは、単なる展示施設ではなく、歴史を学ぶための大変貴重な場所だと感じました。

▼「軍艦島上陸クルーズ」のブログ記事は下記リンクより御覧ください☆

【九州・長崎】世界遺産「軍艦島(端島)」へGO!軍艦島クルーズツアー体験レポ(上陸編)