関東総鎮守の「箱根神社」は古代「箱根権現」と称され、約2400年前に箱根最高峰(標高1438m)の神山を御神体として、遥拝できる駒ヶ岳山頂に神仙宮を開いたことに始まったといいます。(その後、箱根権現を…
【神奈川・箱根】江戸時代にタイムスリップ!「箱根旧街道(杉並木〜石畳〜甘酒茶屋)」を歩く
目次
元箱根から「箱根旧街道 杉並木」へGO!
2022年9月の初秋、元箱根から恩賜箱根公園までの国道1号線に沿って杉並木が立ち並ぶ箱根旧街道を散策しました。こちらの杉並木は個人的に大好きな箱根のお気に入りスポットです。
今回は、元箱根港近辺を訪問する際によく利用している「八丁駐車場(P4/無料)」に車を停め、県道75号線〜国道1号線を歩いて杉並木へ向かいました。
元箱根歩道橋付近に杉並木へと続く「旧東街道 箱根杉並木」の石碑があります。こちらは、箱根関所側の箱根旧街道入口と違ってかなり道幅が狭くなっているので、見過ごさぬよう「元箱根歩道橋」を目印に歩きます。
夏の終りだというのに、遊歩道には紫陽花の花がチラホラ見られました。
国道1号線の合流地点にある「葭原久保 一里塚」
歩道橋のすぐ手前には、日本橋から24里目にある一里塚「葭原久保(よしわらくぼ)一里塚」があり、史跡あとには2本の杉の大木が空高く伸びています。ちなみに箱根町の中には、22里目の「湯本茶屋一里塚」、23里目の「畑宿一里塚」があり、箱根で現存する塚は畑宿のみです。
※旅人の目印として1604年に徳川幕府(徳川家康が秀忠に築造を命じる)が作ったという一里塚は、日本橋を元標として各街道に築造。盛土された塚の上には江戸から京に向かって左側にケヤキ、右側にモミの木が植えられたそうです。
まさに滝廉太郎の「昼なお暗き杉の並木」
高く伸びた巨木の杉に囲まれているせいで昼真っ只中なのに道が暗い…じゃりがあったりしてコケないように下を見ながら歩いているからなおさら暗い…。暗いけれども葉と葉の合間から溢れる陽の光が揺れるアートのようで美しく、鳥のさえずりとヒンヤリとした優しい風が心地良い…。
風光明媚な杉並木をゆっくり歩きながら江戸時代に心を馳せます。
歴史の道「箱根旧街道の杉並木」
江戸時代の1618年、整備のため幕命によって東海道には松が植えられ、芦ノ湖畔には杉が植えられたといいます。江戸時代の人々はこの杉並木が立ち並ぶ旧東海道を通って箱根の山を超えていったんですね。
湯元から畑宿〜元箱根〜箱根町〜箱根峠〜三島に続いた旧東街道沿いで、今現在も残っている杉の木は約400本で、そのほとんどがこの杉並木付近の元箱根地区と箱根町の一部のみ。1618年当時に植えられた杉の木は樹齢400年以上経っているということになりますね。
江戸時代の杉並木と今
箱根旧街道(旧東街道)の杉並木は、当時の面影を感じることができる、箱根名所のひとつ。江戸時代にタイムスリップしたような感覚で杉並木を歩くことができます。
※写真左の古い写真は杉並木を通る「駕籠に乗る人 担ぐ人」。写真右は現在の杉並木。白黒写真だと当時のままの風景…1本1本の木は太くなっているように見えます。
こちらも当時の古い写真。山駕籠に乗ってる人々の中には女性の姿も見られます。
かつてはもっとたくさんの杉並木があったそうですが、明治時代の1904年、湯本〜芦ノ湖畔の新道工事の際、松と杉と合わせて1000本以上の樹木が伐採されてしまったのだとか。
近年は樹勢の衰えがすすみ、芦ノ湖側の並木敷地を対象に1986年から1991年に保護対策を実施。1993年からは杉並木の遊歩道も同様の保護対策(杉の根元の栄養根が踏まれないように紫陽花を植えたり、酸素を土中に送り込み、排水を良くする役目がある砂利をまた遊歩道に敷くなど)が行われたようです。
第二次世界大戦中、伐採されそうになったこともありましたが、現在では、国指定史跡として保護され、芦ノ湖畔周辺の4地区に約420本の杉が残されています。(案内板より抜粋)
箱根関所跡近くの箱根旧街道入口
箱根旧街道入口に到着!葭原久保 一里塚から箱根旧街道入口までの杉並木全長は約550mで、ゆっくり歩いても片道約10分ほど。今回は杉並木を往復して元箱根に戻りました。
※箱根関所跡は、箱根旧街道入口から200mほど南にあります。
▼「箱根関所」についての記事は下記リンクより御覧ください。
苔むした古道「箱根旧街道石畳」を歩く
箱根旧街道の杉並木を歩いたあとはランチを挟み、午後から再び箱根旧街道へ。以前から箱根旧街道の山登りに挑戦したいと思っていて、今回初めて元箱根から甘酒茶屋に続く箱根旧街道の石畳を歩いてみました。
道標には「箱根旧街道 畑宿・湯本を経て小田原に到る」とあります。
今回は県道75号線沿いにある「八丁駐車場」から、すぐ裏手のガソリンスタンドがある交差点から旧東海道を右折し箱根旧街道に向かいましたが、杉並木からそのまま石畳へ行く場合は、箱根神社第一鳥居で二手に分かれる道を右折して旧東街道に入り、約350m先の杉並木歩道橋から箱根旧街道に向かうことになります。
ゆるやかな坂が続く権現坂の石畳
「箱根旧街道(旧東海道)」は、雨が降るとすねまで泥に浸かってしまう悪路だったため、江戸幕府によって1680年に石を敷き詰めた石畳の街道が整備されたといいます。箱根旧街道の石畳は、震災や新道開削などによって多くが失われたそうですが、その一部が江戸時代と変わらない姿で残されています。
まず最初に現れるのが、箱根旧街道で一番長い石畳が続く「権現坂(ごんげんざか)」。緩やかな上り坂で平らな石が敷かれた比較的歩きやすい道です。権現坂を振り返ると芦ノ湖が見えるようですが、この時期は鬱蒼とした木々の葉が邪魔で目視できず…。冬場ならよく見えるのかもしれません。
石畳について
江戸時代の初め、それまで尾根伝いを通っていた湯坂路に替わり、須雲川に沿った谷間の道が東海道として整備されました。整備した当初は箱根に群生するハコネダケという細竹を毎年敷き詰めていたようです。しかし、大変な費用と労力がかかることから、延宝8年(1680年)、石を敷いた石だたみの道になりました。その後、江戸時代末期の文久2年(1863年)、14代将軍 徳川家茂が京都に上洛する際、全面的に改修されました。なお、この箱根旧街道は昭和35年(1960年)、国の史跡に指定されています。(案内板より引用)
権現坂の祠
権現坂の途中に朱色の鳥居が現れたので、石段を上ってみると小さな祠が…。住宅に囲まれているので家や土地を守る「屋敷神」なのでしょうか、ものすごいパワーを感じる樹木に守られたとても良い気を感じる場所です。
小田原から箱根路をのぼる旅人が、いくつかの急所. 難所をあえいでたどりつき、一息つくのがこの場所です。目前に芦の湖を展望し、箱根山に来たという旅の実感が、体に伝わってくるところです。(案内板より引用)
権現坂の祠から少し上ったところで旧街道を横切る細い車道に出ました。道標には湯本まで2時間とあり、左に向かうとお玉ヶ池・精進池へ行けるようです。
天蓋石が横たわる「天ヶ石坂」
しばらく進むと急な下り坂になる7間(13m)の「天ヶ石坂」が現れます。この坂には「天蓋石」と呼ばれる約2.4m四方の巨石が横たわっており、畑宿と箱根宿の境の目印にもされていたそうです。
長い急坂が続く「白水坂」
天ヶ石坂の先には、更に長い12間(22m)の急坂「白水坂(城見ず坂)」が現れます。ここは、豊臣秀吉の小田原攻めで、北条方が石を落として撃退し、軍勢が城を見ずに引き返したのが名前の由来といわれている坂。天ヶ石坂と白水坂はとにかく急勾配な下り坂の連続です!
しかも石畳も凸凹な石ばかりで、足を挫かないように慎重に歩かなければいけないこともあり、下りといえども結構な気力体力を消耗しました。
「箱根甘酒茶屋」に到着!
国道1号に交差後「於玉坂」を下り、目的地「箱根甘酒茶屋」に到着!権現坂の祠に立ち寄ったり、写真やビデオを撮りながら、かなり慎重にゆっくりと歩いたので、杉並木歩道橋から45分かかりました。
江戸時代から400年続く茅葺屋根の甘酒茶屋
江戸時代初期に創業したという「箱根甘酒茶屋」は、代々受継がれた味を現在に伝える、箱根峠に唯一残った老舗の甘酒茶屋(現当主は12代目)。
江戸時代、箱根地域には9箇所の茶屋が置かれ、旅人が一休みするにはちょうど良いとされたこちらの場所(畑宿と箱根宿の中間点)には、当時4軒ほどの茶屋があったそうですが、明治に入ると歩いて旅をする人も少なくなり、現在は「箱根甘酒茶屋」の1軒のみが残っています。
「神崎与五郎 東下り」の逸話とは
赤穂浪士の一人「神崎与五郎」は、大石内蔵助の内命で京から江戸へ向かった。旅の途中、箱根の山の茶屋で休んでいるところに、ならず者の馬子「丑五郎」にいいがかりをつけられた。しかし討ち入りという大事の前の小事として我慢を重ね、恥辱を受けつつそのまま立ち去った。後日、赤穂浪士の討ち入りの中に神崎がいたことを知った丑五郎は、己を恥じて出家、神崎を弔ったと伝わる逸話。
現在は、この逸話を元に「神崎与五郎 東下り」の演目が、講談、浪曲、歌舞伎などで見られるようです。
箱根甘酒茶屋の店内で休憩
店内にはテーブル席のほか囲炉裏を囲む小上がりなどもあって広々とした空間、開放感のある高い天井には山駕籠(竹で編んだ底に、網代の屋根などをつけ、丸棒や丸竹をつり手にしたもの)が展示されていました。(この日は休日でほぼ満席状態だったので店内の写真撮影は控えました。)
箱根甘酒茶屋では甘酒と力餅が名物とのことですが…、体が欲したのは酢の効いたトコロテンと、甘くて冷たいかき氷。こちらも美味しくいただきました☺︎
箱根登山バスに乗って元箱根へ
本来は元箱根〜甘酒茶屋を往復する予定でしたが、復路はいきなり上り続けなければいけない急勾配の坂、天ヶ石坂と白水坂に恐れをなし、帰りは「甘酒茶屋」バス停から箱根登山バスに乗車して元箱根に戻りました。
幾度となくこの県道732号線を通っていたにも関わらず毎度素通りしてしまっていた甘酒茶屋ですが…、収容台数30台の駐車場があるので、今度は車で立ち寄って名物の甘酒と力餅をいただいてみたいと思います☺︎
箱根甘酒茶屋
箱根町畑宿二子山395-28
0460-83-6418