【イギリス・ロンドン】心に響くアート時間!バンクサイド地区の無料で楽しめる美術館「テート・モダン」

近現代美術館「テート・モダン」へGO!

ロンドン・テムズ川の南岸、バンクサイド地区に位置する「テート・モダン(Tate Modern)」は、2000年に開館したイギリスの国立現代美術館(今年は開館25周年)。元々は火力発電所として使われていた建物を大規模に改装したもので、その独特な凹凸のある外観は、折り紙を折ったようなユニークなフォルム。周囲には近代的なビルが立ち並び、敷地内の一角には「コーナー(CORNER)」というカフェが併設されています。


Tate Modern
Bankside, London SE1 9TG

吹き抜けの巨大な「タービン・ホール」

エントランスを抜けると、まず目に飛び込んでくるのが、かつて大型発電機が置かれていた巨大な「タービン・ホール(Turbine Hall)」。高さ6階分にもおよぶ吹き抜け構造で、天窓から自然光が差し込む壮大なスケールには圧倒されます。産業遺産を見事に再生したテート・モダンの象徴的な空間といえそうです。

※タービン・ホールを挟んで、右側がブラバトニク棟(Blavatnik Building/旧変電施設)、左側がナタリー・ベル棟(Natalie Bell Building/旧ボイラー室)で、この2棟はタービン・ホールを横断する通路や4階のブリッジでつながっている。

多様な現代アートが中心の「ブラバトニク棟」

ブラバトニク棟は、インスタレーション、映像作品、パフォーマンスアート、参加型アートなど、新しいメディアを用いた作品が多く、様々なメディアを用いた現代アートを中心とした展示棟。若手作家やグローバルサウスのアーティスト作品にも力を入れており、現代社会と美術の関係を問う展示も多く見られます。

石油貯蔵施設だった「タンク」

タービン・ホールの緩やかなスロープを進み、まずは発電所時代に石油を貯蔵していたという、直径30m以上、高さ7mほどのコンクリート打ちっぱなしの地下空間「タンク(The Tank)」へ。ブラバトニク棟の基礎部分にあたるこの巨大な円形の空間は、ライブアートやインスタレーションなどを展示するギャラリーになっています。

コレクションディスプレイ(LEVEL3)

「パフォーマンス & パーティシパント(PERFORMER AND PERTICIPANT)」は、鑑賞するだけでなく、動いたり、参加したり、自分も作品に関わり、作品の一部になって楽しむようなアートを集めた展示。「となりのトトロ」に出てくるネコバスなどの作品もありました。

テムズ川とシティの街並みが一望できる最上階(LEVEL10)

お次は、テムズ川とシティを一望できる最上階へ。

ブラバトニク棟の最上階にあった展望スペース「ビューイング・レベル(Viewing Level)」は、2023年以降閉鎖中とのことでしたが、案内板にはレベル10に「エスプレッソ・バー(Espresso Bar)」と表示されていたのでエレベーターで上がってみたところ、ゆったりと落ち着ける素敵なカフェ空間がありました。(その後すぐにエスプレッソバーは、ナタリー・ベル棟のLevel 3へ移行)

20世紀の近代・現代作品が中心の「ナタリーベル棟」

ナタリーベル棟は1900年頃から近代・現代の作品を中心とした展示棟。パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、マーク・ロスコ、モンドリアンなどの20世紀前半〜中盤の巨匠の作品も多く見られます。

コレクション・ディスプレイ(LEVEL4)

「マテリアル&オブジェクツ(MATERIALS AND OBJECTS)」は、美術素材以外の新しく珍しい素材を積極的に取り入れ、アーティストによる資源の再解釈、コラージュやレディメイドなど、多様な技法で物質とアートの関係性を問い直す展示構成。個人的には、ナリニ・マラ二の映像、影、音を組み合わせ様々な物語を語った幻想的な影絵のパフォーマンス作品に感銘を受けました。


MATERIALS AND OBJECTS

「メディア・ネットワークス(Media Networks)」は、広告やテレビ、インターネットなど、情報が広がるしくみとアートの関係を探る展示で、ポップアートや社会的メッセージを含んだ作品が多く、メディア時代における「見ること・見せられること」の意味を問いかけています。


MEDIA NETWORKS

エクスビジョン(LEVEL3)

ナタリー・ベル棟のレベル3では、1950年代からインターネット以前までのヴィンテージなテクノロジー系アートを紹介する「エレクトリック・ドリームス(Electric Dreams)」(2024年11月28日〜2025年6月1日)と、1980年代ロンドンのクラブシーンや前衛パフォーマンスで注目を集めたアーティスト、リー・バウリーの衣装や映像作品を紹介する回顧展「リー・バウリー!(Leigh Bowery!)」(2024年6月22日〜2025年8月31日)の有料展覧会が開催されていました。

コレクション・ディスプレイ(LEVEL2)

ナタリー・ベル棟のレベル2は、モダンアートの多様な視点をテーマ別に紹介するコレクション・ディスプレイ。創作の過程やアトリエの雰囲気を伝える「イン・ザ・スタジオ(In the Studio)」では、マン・レイやモランディに加え、アンディ・ウォーホルの作品も展示されており、アーティストの制作背景に触れることができました。ほかにも、モネやマティスを通じてモダンアートの原点に迫る「スタート・ディスプレイ(Start Display)」、芸術と社会の関係性を探る「アーティスト・アンド・ソサエティ(Artist and Society)」など、テーマごとに構成された展示が魅力です。

アートグッズ満載の「タービン・ホール・ショップ」

展覧会を楽しんだあとは、タービン・ホールに隣接する「タービン・ホール・ショップ(Turbine Hall Shop)」へ立ち寄りました。展示にちなんだ限定アイテムのほか、モダンアートをモチーフにした文房具や雑貨、アートブックなど、感性をくすぐるグッズが並び、アーティストの作品を日常に取り入れたユニクロとのコラボTシャツなども展開されていて、現代アートを気軽に楽しめるラインナップが魅力です。

テート・モダンの裏手に広がるテムズ川沿い

テート・モダンを訪れたあとは、その裏手に広がるテムズ川沿いを散策しました。春の光に照らされた川の向こうにはセント・ポール大聖堂がそびえ、さらに奥には高層ビル群まで見渡せる、ロンドンならではの風景が広がる絶景スポットです。穏やかな陽だまりの中、ベンチで日向ぼっこを楽しむ人や、干潮時に現れる砂浜で犬と遊ぶ人の姿もあり、のどかな空気が流れていました。

あとがき

テート・モダンは、一部の展示を覗き、無料で楽しめる美術館。約2時間半の滞在でしたが、フリーエリアのディスプレイだけでも周りきれない広さで、十分な見ごたえがある充実度でした。アートだけではなく建築も存分に楽しめます。

気になる展示だけを気ままにのぞいてみたり、時間があればレストランやカフェでテムズ川の風景を眺めながらゆっくり過ごしてみたり…。そんなふうに思い思いのペースで楽しめるのも、テート・モダンの魅力のひとつなのでしょう。またふらっと立ち寄ってみたくなる、そんな心地よい気軽さがある美術館です。