【東京・ミュージアム】丸の内駅舎に息づく赤レンガの美術館「東京ステーションギャラリー」を訪ねて

「東京ステーションギャラリー」へGO!

赤煉瓦の美しい東京駅の丸の内駅舎の中に、静かに時を刻む美術館「東京ステーションギャラリー」(1988年開館)があります。1914年に完成した東京駅丸の内駅舎の構造や意匠を生かして改修されたこのギャラリーでは、これまでに近代から現代までの多彩な美術、デザイン、建築、写真など、さまざまな展覧会が開催されてきました。都市の喧騒のすぐそばにありながら、歴史と芸術が交錯する穏やかな空間です。

今回は、藤田嗣治の展覧会チケットを友人にいただいたのをきっかけに、久しぶりに東京ステーションギャラリーを訪れることに。東京駅丸の内北口の改札と直結しているため、電車でのアクセスが最も便利ですが、車の場合は「ヤエチカパーキング」(対象店舗で1店舗につき3000円以上の利用で2時間無料)が利用しやすいです。

以前から気になっていた「花ごよみ東京」のビュッフェランチがギャラリーからも近く、休日ランチの利用で4時間の駐車が無料(土日祝ランチとディナーに限る)になるとのことだったので、今回はそちらを利用し、食事後ギャラリーへ向かいました。(写真は新丸ビルより撮影)

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東京駅丸の内駅舎北口

東京駅の丸の内駅舎には、南北2つの八角屋根のドームがあり、東京ステーションギャラリーの入口は丸の内北口の1階にあります。ドーム天井は、復原工事(2007〜2012年)によって開業当時の姿が再現されています。

丸の内駅舎の美しい八角ドーム

中心部から放射状に伸びる梁と、黄色を基調とした漆喰装飾が印象的な八角ドームの天井には、翼を広げた優雅な鷲や干支のレリーフが配され、東京駅が日本の玄関口として設計された象徴的な空間を形づくっています。この八角形の意匠は、西洋建築の影響を受けた明治から大正期にかけての建築を代表するデザインでもあります。

東京ステーションギャラリーの螺旋階段

東京ステーションギャラリーには、建築当時の趣が随所に残されており、展示作品と建築空間が共鳴し合うその佇まいは、改めて素晴らしいものだと感じました。残念ながら展覧会はすべて写真撮影が禁止のため、ギャラリー空間で見られるレンガ壁やむき出しになった鉄骨を写真に収めることはできませんでしたが、展示室を出た場所から撮影可能だった場所をいくつか紹介します。

まずは、赤レンガ壁をそのまま生かしながら設計された東京ステーションギャラリーの螺旋階段。木製の階段とガラスの手すり、黒い鉄骨のフレームが組み合わされたデザインで、上階から見下ろすと、光が階段の中心へと吸い込まれるように落ち、静謐でありながら劇的な空間を作り出しています。

この螺旋階段は、展示室をつなぐ動線であると同時に、建築そのものを作品として感じることができる場所。レンガの壁に残る傷跡や、修復によって蘇った構造体が、過去と現在を結ぶ静かな物語を紡ぎ出します。

階段を囲む煉瓦壁には、1914年に東京駅が完成した当時の赤レンガがそのまま使われています。東京ステーションギャラリーや丸の内駅舎を形づくるこれらのレンガには、100年以上前の焼きムラや補修の跡が残り、時代の重みを静かに伝えています。

このレンガは主に、明治末期から大正初期にかけて国内で製造された国産レンガで、建築設計を担当した辰野金吾らの監修のもと、厳選された材料と技術で積み上げられました。第二次世界大戦の空襲で駅舎の一部が焼失しましたが、復原工事(2007〜2012年)では、当時のレンガを可能な限り再利用し、損傷部分は同じ成分・色合いの新しいレンガで補修。現在も、100年以上前の本物のレンガ壁がギャラリー内部に残り、東京駅の歴史を物語っています。(公式HPより引用)

見上げると、温かな光を放つレトロな照明が、赤レンガの壁と木の階段をやさしく照らしていました。

煉瓦の質感と光の陰影が織りなす光景は、東京ステーションギャラリーならではの魅力です。

北ドーム2階の回廊

3階から2階の展示を観覧してミュージアムショップ(ショップのみの利用は不可)へ立ち寄ったあとは、八角ドームをぐるりと囲むように設けられた回廊へ。高く開けた吹き抜けの床に描かれたモザイク模様と天井の装飾が呼応するように構成され、ヨーロッパの歴史建築を思わせる重厚な雰囲気です。上から見下ろすドーム内のコンコースには、絶えず人々が行き交っています。

南北ドームの装飾レリーフ

回廊には、当時の意匠を今に伝えるオリジナル部材や復原品が展示されており、こちらは花をモチーフにしたロゼットの装飾レリーフと、ドーム天井の干支を復原する際に用いられた石膏原型(上段左から丑・寅・辰・巳、下段左から未・申・戌・亥)。一部欠けた状態で展示されているロゼット装飾は、オリジナルのようにも見えますが、実際には当時の資料をもとに形状・素材・色彩まで忠実に再現された復原装飾です。

創建時、南北のドーム天井には、ドームの方位にしたがって十二支中の八支の石膏彫刻が、ホールを見下ろすように取り付けられていました。これらの干支レリーフは、第2次世界対戦中の空襲によって消失したため、今回の保存・復原工事では、古写真と文献をもとに試作が重ねられ復原されました。(案内板より引用)

第八号階段手すり(オリジナル)

第八号階段手すりは、創建時に食堂があった駅舎南端の南ウィングの1〜2階の箇所にそのまま残存していたという手すり。駅舎の修復・復原工事(2007〜2012年)の際に取り外された後、歴史的建築部材として保存・展示されています。

月のデザインが粋なブラケット

こちらは、創建当時に駅舎南北ドームの3階回廊の支えとして、つけられていたという鉄製三角形のプラケット。月の満ち欠けを表したデザインが粋です。(右から、三日月、十三夜、望月、下弦の月) 

保存・復元工事により、南ドーム部の下屋根解体中、鉄鋼構の一部として転用されていたブラケット10体が発見され、新月以外のデザインが明らかになりました。現在は具苦言されたブラケットが、北面の新月から時計回りに三日月、上弦の月、十三夜、望月、立待月、下弦の月、二十六夜と配置されています。(案内板より引用)

東京駅の駅舎と丸の内の変遷

こちらの展示は、東京駅丸の内駅舎と3時代のジオラマから丸の内の変遷(上段には駅舎建設当時の資料と写真、下段には1914年・1964年・2014年という三つの時代を再現した丸の内エリアの模型)を示したものです。

1914年(大正3年)開業当時

東京駅は、辰野金吾氏の設計による赤レンガ造りの壮麗な駅舎として誕生。周囲はまだ低層の建物が多く、皇居外苑から続く街並みの中に駅舎が堂々と立ち、まさに「日本の玄関口」としての風格を漂わせていました。

1964年(昭和39年)東京オリンピックの頃

戦災で焼失したドーム部分が切妻屋根に改修され、赤レンガの外観は残るものの、駅舎はより実用的な姿に。丸の内には近代的なオフィスビルが次々と建ち並び、東京の経済成長を象徴するビジネス街へと変貌していきます。

2014年(平成26年)復原完成後

約5年に及ぶ保存・復原工事を経て、東京駅は開業当時の姿をほぼ忠実に再現。南北のドームが復元され、丸の内駅舎全体が国の重要文化財として甦りました。周辺には超高層ビルが立ち並ぶ一方で、駅舎はその中心に静かに佇み、過去と未来をつなぐシンボルとして新たな時を刻んでいます。


東京ギャラリーステーション
東京都千代田区丸の内19-1
03-3212-2485

あとがき

「東京ステーションギャラリー」は、展示作品を鑑賞する単なる美術館ではなく、東京という都市の歴史と文化を映し出す「時の美術館」。赤煉瓦の外観とアーチ窓に囲まれた空間は、駅の喧騒を忘れさせる上質な静けさに満ちています。

久しぶりに足を踏み入れた館内は、赤煉瓦の温もりと静かな光に包まれ、建物そのものが語る東京の記憶に触れることができるひとときで、あらためてこの場所の魅力を再発見することができました。

東京駅丸の内駅舎内には、もうひとつの魅力的な空間「東京ステーションホテル」が併設されています。1915年に開業したホテルで、ギャラリーと同じく、歴史的建築の魅力をそのままに現代の快適さを融合させたクラシックホテルです。不定期開催で、ホテル館内ツアー付きのランチプランなども実施しており、年度内に行く予定なので、そちらの内容も後日アップしたいと思います。