【東京・ミュージアム】恵比寿ガーデンプレイス・東京写真美術館(トップミュージアム)の「時間旅行」へGO!

東京都写真美術館「時間旅行」へGO!

「東京都写真美術館(以下トップミュージアム)」の3階展示室で開催中のTOPコレクションを観てきました。場所は恵比寿ガーデンプレイス内にあり、JR山手線「恵比寿駅」東口から 徒歩約5分、地下鉄日比谷線「恵比寿駅」1番出口から徒歩約7分。スカイウォークの動く歩道で雨の日でも濡れずにアクセスできる便利な場所です。

今回は恵比寿ガーデンプレイスの駐車場を利用し、美術館の駐車サービスはないのでタワー棟のボッチャーノでランチをしてサービス券をゲットしました。→ブログ記事はコチラ

展覧会のテーマは「時間旅行」。なんて魅力的な響きでしょう!トップミュージアムの展覧会はいつか行ってみたいと思いつつ何度も機会を逃していて今回も4月から開催しているというのに気づけばもう7月!また見逃してしまうところでしたが開催終了間際で間に合いました。すでに展覧会は終了していますが、とても素敵な写真展だったのでアーカイブとしてアップします。

まずここはトップミュージアムの入口に続く迫力のフォトウォールと市松模様のアプローチが素敵なんですよ〜✨️ フォトーウォールのひとつは、私の大好きなロベール・ドアノーの有名なThe Kissの作品です♡

トップミュージアムの館内

館内には3つの展示室(B1F・2F・3F)があり、1階に上映ホール・写真美術館で観る映画(実験劇場)やカフェ、2階にショップミュージアム、4階に国内外の写真集等が閲覧できる図書室があります。

チケットはぐるっとパスで入場することができました。時間旅行の作品は、1924年(大正13年)▶昭和モダン街▶ヱビスビールの記憶▶20世紀の旅▶時空の旅と、第一室から第五室に区切られて展示されており、一部を除いて写真撮影もOK?!すごい!

第一室 1924年 – 大正13年

時間旅行出発点の第一室は、時代の移り変わりの中で新たな芸術を模索した作家たちの1924年作品。説明によると、今からちょうど100年前の大正13年、海外ではモダニズム芸術運動が開花しはじめた頃とあります。

第二室 昭和モダン街

第二室は、1930年代を中心に上野、浅草、新宿など昭和初期の東京モダン街を切り取った作品の数々。朝日新聞が刊行していた週刊グラフ誌「アサヒグラフ(画報誌)」や、鮮やかな色彩で描かれた広告ポスター(国立工芸館・江戸東京博物館所蔵)なども展示されており、魅力満載のコーナーでした。

▼「大東京の性格」1930-1940年 / 堀野正雄

▼「下谷区下車坂町(台東区上野7) 」1938年 / 桑原甲子雄

▼歴史的瞬間を捉えた週刊グラフ誌「アサヒグラフ(1923年/大正12年〜2000年/平成12年)」の表紙 

▼国立工芸館所蔵のリトグラフ、オフセット・ポスター  作者:杉浦非水
東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通 1927年 / 帝都復興と東京地下鉄道 1929年 / 新宿三越落成 十月十日開店 1930年
カルピス 1926年 / ヤマサ醤油 1920年代  

第三室 かつて、ここで – 「ヱビスビール」の記憶

第三室は「ヱビスビール」の記憶。かつてこの恵比寿ガーデンプレイスには、地名の由来にもなった「サッポロビール恵比寿工場 1889年(明治22年)〜1988年(昭和63年)」がありました。(2024年4月、35年ぶりに恵比寿の地でビール醸造を再復活させた「YEBISU BREWERY TOKYO」がリニューアルオープンしています。)

1914年(大正3年)〜1973年(昭和48年)までは、トップミュージアムがある場所に「製麦棟 」が建っており、屋根から突き出る4本のカブト煙突はヱビスビールのシンボルと言われていたのだそう。このカブト煙突先端部のひとつが、サッポロビール本社前に展示されています。

▼「サッポロビール恵比寿工場」1990年 / 宮本隆司  「D51 488 山手貨物線(恵比寿)」1953年 / 黒岩保美 

当時のヱビスビールの姿と歴史を映す写真&ポスター

第四室 20世紀の旅 – グラフ雑誌に見る時代相

こちらはトップミュージアム図書室の蔵書から選ばれた「LIFE」と「アサヒグラフ」のバックナンバーから20世紀の時代の変遷を見る第四室。グラフジャーナリズムを代表する写真家たちの作品も展示されていました。

「LIFE」は、「人生を見よう、世界を見よう、偉大な出来事を目撃しよう」をテーマに1936年アメリカのタイム社が創刊した週刊写真雑誌。ニュースメディアの中心となった黄金時代(1930年代〜50年代)を過ぎると、時代はテレビへと移り変わり、次第に経営難と陥って1972年に休刊となった。(英語ウェブサイト「LIFE Picture Collection」で写真の閲覧が可能)

▼「渋谷駅前広場」1948年 / 田沼武能 

終戦から3年後の渋谷はこんな感じだったんですね…

▼「東京花火(銀座より両国方面)」1954年 「盆踊り 靖国神社」1954年 / 大束元

戦後から復興する日本の姿を記録した写真の数々に高度成長期の活気がうかがえます。

▼「群衆 上野駅」1960年代 / 大束元 

およそ60年もの時を経て名残のあるこの天井…ここは上野駅の中央改札ですね☺︎ 今もいつ来ても混雑しているのは変わらないけれど、輪になって話し込んでいたり、地べたに座って寝込んでいたり…この雑然とした群衆は色んな意味ですごい!

▼「パリ市庁舎前のキス」1950年 / ロベール・ドアノー

1950年代の活気あふれるパリの街中で撮られたロベール・ドアノーの白黒写真「The Kiss」。忙しく行き交う人々とは対照的に、恋人同士の2人だけ時が止まったようにキスを交わす瞬間を描いたこの一枚からはたくさんのストーリーが連想されます。

ちなみにこの写真は、パリの恋人たちをテーマにした「LIFE」の依頼で撮影された作品群のひとつで、ロベール・ドアノーがカフェで見つけた2人にモデルを依頼して撮影したというもの。私の大好きな写真です♡

その後2人は別れ….モデルの女性は女優としてのキャリアを築き、生涯を通じて芸術と文化に貢献、昨年の暮れ93歳で亡くなっています。(ロベール・ドアノーは1994年、モデルの男性は2006年に逝去)今は亡き過去の人々の一瞬を捉えた写真が、時を越えて今もリブリーに息づいていることに胸が震えます…。

第五室 時空の旅 – 新生代沖積世

第五室は、100年前の幻燈写真やマルチプロジェクションの映像作品など、20世紀から現在までの多層的な時空間を旅するコーナー。

▼「日本風景風俗100選」 1910-1923年 / 高木庭次郎

▼1930年代の渋谷駅周辺と1950年代の浅草・松屋百貨店

「渋谷駅前」1939年 / 桑原甲子雄  「渋谷駅前」1936年 / 師岡宏次 「松屋百貨店屋上の新型機スカイクルーザー」1954年 / 田沼武能

そういえば幼い頃デパートの屋上遊園地って結構ありました。(遠い目…)写真ほど盛況ではなかったにしても、デパ地下ならぬデパ屋は当時まだ人気だったように思います。過去の写真を目前に現在の閑散とした「松屋浅草」の屋上(現エキミセ・浅草ハレテラス)を思うと、様々な感情が交錯します…。

▼宮沢賢治の肖像写真と生前唯一の詩集

「心象スケッチ 春と修羅」は宮沢賢治が1924年4月に刊行した生前唯一の詩集。22-23年の間に詩作した69編と序文を掲載する。自身が装丁を手がけたこの書籍は限定1000部の自費出版。その作品は一部で大きく評価されるが、本はほとんど売れなかった。後世この作品は現代史の新しい可能性を示したとして大きく評価された。序文で述べられる「第四次延長」とは賢治の想像した、過去・現在、未来を自由に行き来できる詩作の世界を指す。24年頃に撮影されたとされる「宮沢賢治の肖像写真」は、自身が敬愛するベートーヴェンに扮した演出写真であり、セルフポートレイト的な性格を持つ。(展示室説明文より引用)

▼「釜石線の列車」1950年代 / 島田謹介 

哀愁漂う素敵な風景写真✨️ 釜石線は岩手県花巻市の「花巻駅」と釜石市の「釜石駅」を結ぶ線路のようで、モクモクと出る煙を伴って橋梁を渡るSL列車に哀愁の中に秘めた強さを感じる…宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を読んでみたくなりました。

あとがき

過去から未来につながる「時間旅行」は、期待以上に良かった!!

見しらぬ風景に魅せられ、憧れ、想いを寄せるだけじゃなく、作品の中には自分と縁のある場所や過去との関わりを思い出すようなシーンも多々ありました。頭の片隅に残っていた記憶の断片が次々と連鎖する不思議。失われた記憶が蘇ってくる…写真っていいですね。まさに時間旅行でトリップさせてもらいました。

ふと気づけば慣れ親しんでいた景色が跡形もなく消え去っている…なんてことが増えてきた今日このごろ。自分の記憶もだんだん薄れてまるで夢だったかのように過ぎ去り、そのうち完全に消失…。なんて寂しすぎます〜><

慣れ親しんだ景色や、繰り返し見ているような景色を、あえて写真に残そうと思ったことも考えも及ばなかったけれど、これからは普段の何気ない風景も記録写真として切り取っていこう☆ そんな思いを胸にトップミュージアムをあとにしました☺︎