ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントの先駆けとなった「エサレン研究所(Esalen Institute)」は、アメリカ・カリフォルニア州ビッグサーの風光明媚な海岸線沿いにあります。2018年11月、…
【カリフォルニア州ビッグサー】エサレン研究所のワークショップ「ペインティング体験」に参加!
2018年11月、アメリカ・カリフォルニア州・ビッグサーにある「エサレン研究所(Esalen Institute)」を訪問しました。今回の記事は参加したワークショップ「ペインティング体験」についてです。
目次
エサレン研究所に関するコンテンツ
エサレンのワークショップについて
「エサレン研究所(Esalen Institute)」では、マッサージ、禅、太極拳、ダンス、マインドフルネスメディテーション、ゲシュタルト、ペインティング、モザイクアートなど、様々なワークショップを開催しています。
※料金にはワークショップ代(教材費等は別)のほか、宿泊費、食費、温泉などの施設利用、ヨガ・太極拳などの体験プログラムを含む
基本的に毎週2回(金曜日〜日曜日、日曜日〜金曜日)、各期間中に2〜4つのワークショップを開催しているほか、ヨガやゲシュタルトなど1ヶ月のクラス、またプラクティショナーになるためのエサレンマッサージ等、短期・長期のクラスなどがあります。
「ペインティング体験」会場までの道のりと風景
今回の「ペインティング体験」の会場は、ロッジから遠く離れた「レオナルド・パヴィリオン」でした。ワークショップの開催場所がこちらの場合、毎回約650mほどの道のりを1日に2,3度往復(夜は懐中電灯要)することになります。最初は遠く感じますが、美しい景観を眺めながら、健康的なエクササイズになります。
風景そのものがアートな「メインガーデン」
キャニオンブリッジを渡り「ノースキャンパス」へ
キャニオンブリッジから「アートバーン(Art Barn)」へ
ワークショップの会場「レオナルド・パビリオン」
アートバーンのすぐ先に白いカバーを覆った巨大テント「レオナルド・パビリオン(Leonardo Pavillion)」があります。
レオナルドパヴィリオンの外観とミーティング前の風景
パビリオンは絶壁のすぐそばに設置されているので、波の音がよく聴こえます。ワークショップの3〜5日目はあいにく雨天で、嵐のような激しい風が吹いたときは、恐ろしさを感じるほどの荒波でしたが、普段はさざ波の音が心地よい海岸です。
「ペインティング体験」ワークショップの初日
どのワークショップもエサレンに到着した日の夜20時半からミーティングが行われます。今回参加した5泊6日のワークショップ「ペインティング体験」の参加者は、33名という大人数!年配の方の割合が多く、そのうち海外からの参加者は私と友人の2名のみでした。
初日は軽く顔合わせで自己紹介をする感じだと思っていたのですが、指導者(Stewart)とスタッフ(Lydia & Molly)の自己紹介が終わるとクラスでの簡単なルールと筆の使い方などをひと通り説明し、特に参加者が自己紹介をすることもなく、早速ペインティングを開始!?
すでに外は真暗な夜の21時!そこからペインティングが始まったことに少々驚きました。
創造の目覚め「ペインティング体験」とは?
創設者・指導者の「スチュワート・キュブリー(Stewart Cubley)」による「ペインティング・エクスペリエンス(The Painting Experience)」は、成果よりも創造的な過程を重視した「プロセス・ペインティング(Process Painting)」です。
プロセスペインティングでは、ペイントブラシを握ったことのない初心者を含め、あらゆるレベルの経験者を歓迎、一般的な絵画教室とは一線を画したプログラムとなっています。
その目的はアートの才能や技術を磨くためのものではなく、達成度を気にしない創造的な行為そのもの。制約のない自発的な創造、また自分が作り出す制限を超え予想外の領域を探索する内面の旅に出ることで、創造の世界に目覚め、インスピレーションを育て、成長と変化を促すというものです。
この目的を達成するためのルールとして、友人同士の参加者が隣同士になること、描いた絵をジャッジすること、他人との比較、また他人の絵を評価することなどはNG!どんなに素晴らしい作品に出会っても褒めることができないという点が、このルールの一番難しいところでした。
プロセスペインティングの心構え
- 自分だけの創造的な声を発見する
- 心の中で起きる批判的な声ではなく、直感を信頼する
- 計画や制御ではなく直感に従うことで内なる野生を解放
- よく見せること、理にかなうことではなく、自分から放たれるエネルギーに従う
- 想像力を聡明でより深い知識への入口として体験する
- スピリチュアルな目覚めのツールとしてプロセスペインティングを探求する
プロセスペインティングの有効性
- 演じる、競う、成功させるというようなプレッシャーを受けずに創造することの爽快感
- 技術や専門知識を必要としない初心で創造する自由表現の喜びと楽しさ
- 「今この瞬間に存在する」ことに焦点をあてた実践的な精神性の学び
- 隠されたメッセージを取り入れることによってブロックを克服する
- 作業過程の自分との出会いによるマインドフルネスな瞑想
- 直感に導かれ完成した真のペインティングが心に癒やしをもたらす
ペインティング体験のタイムスケジュール
各ワークショップのクラスによりタイムスケジュールは異なりますが、参考までに「ペインティング体験」の1日のスケジュールは、午前中、午後、夜のそれぞれ2時間づつ行われました。また、夜のクラスはペインティングの他にアートのビデオ鑑賞に参加することもできました。
1日目(日) 20:30 – 22:00
2日目(月) 10:00 – 12:00 、16:15 – 18:15、20:00 – 22:00
3日目(火) 10:00 – 12:00 、16:15 – 18:15、20:00 – 22:00
4日目(水) 09:30 – 12:00 、16:15 – 18:15
5日目(木) 10:00 – 12:00 、16:15 – 18:15、20:00 – 22:00
6日目(金) 10:00 – 12:00
ペインティグ体験のクラス風景
ペインティング体験のクラスは毎日10時にスタート。中央のスペースに円陣を組んで行われる20分ほどのミーティングをすることから1日が始まります。ミーティングの内容はペインティング作業の過程で経験していることなどを自発的に発表し、それについて皆がディスカッションするというもの。
ミーティングが終わると、それぞれが自分のポジションにつき、黙々と自分と対話しながらペインティングと向き合います。また、指導者の「スチュワート」、ファシリテーターの「リディアとモリー」の3人がクラス内をまわり、それぞれのプロセスについてサポートやアドバイスをしてくれました。
写真左から指導者スチュワート、ファシリテーターのリディアとモリー
太平洋に沈む夕日は圧巻の美しさ
プロセスペインティング体験記
5泊6日の「プロセスペインティング」の中で、絵が1枚完成できたらいいと思っていたところ、実際はワークが楽しすぎて最終的に4枚完成させることができました。
そのプロセスは、全て人それぞれですが、私にとってはじめての体験がどのようなものだったのか、1枚目のプロセスを例にご紹介します。
何のプランも持たないまま、一体私は何を描くのだろうという好奇心の中、まっさらな画用紙を前に心を落ち着けかせた。
波の音が聴こえてきたので、私は自然と青い海を描き始め、波の音に合わせて波のウェイブを描いた。大きな波の音が聞こえれば描かれるウェーブも大きくなり、いつしか手と波が同調したムーブメントに変わった。その動きが軽やかで心地よくとても楽しい。
寄せては返す波のリズムに合わせていると、中央に大きなサインが現れた。動きが右に左に移行し3つの「無限 ∞」ができた。それはもはや波には見えない。
「無限 ∞」を縦にすると、それは私の誕生日の数字でありソウルナンバーの「8」。その絵に驚き、なぜか武者震いがした。
計画したわけでも、制御したわけでもない、図らずもそのサインが現れたのには意味があるに違いない…走馬灯のように色々な言葉の破片と感覚が浮かんでは消え、ハッとした。
これから実現しようとしていることに対して、半ばその可能性を制限している自分自身に気づく…
包み隠さずさらけ出そうとする自分、可能性を信じる自分、成功を信じる自分、と同時に、ひとつ下の階層で、他人の評価を気にする自分、自分のアイディアがマイノリティであるとジャッジする自分、世間とのギャップを作り出す自分、自信を失う自分etc…
いつしか習慣化した古い思考回路に引き戻され、存在意義が他人に委ねられ、狭い思い込みの中で足を引っ張り合うネガティブな要素たち…が存在し、更にその奥深くに、ネガティブな感情を認めたくないプライドetc、全てを正当化し都合の悪いものを覆い隠そうと奔走する無意識があった。
複雑に絡み合い上下左右に交錯する意識を紐解くには多少の時間がかかるとしても、直感は数秒間で全てを見抜き、その真髄となる源に繋がるのだろう。それが武者震いとなって私の心を奮い立たせたのだと思う。
ひとつの信念が、ひとつの作品として、世界にひとつ存在することそのものが存在意義であり「可能性は無限大なんだよ。」と、眼の前に現れた絵が私を嗜めているようだった。
自分と対話しながら絵を描くプロセスの中で、潜在意識に隠されたヒントが浮かび上がり、制限しているものに気づくことは、「隠されたメッセージを取り入れることによってブロックを克服する」ことにつながる。
自分と他人を比較しない、良いとか悪いとかジャッジしない、評価を与えず求めもしないetc…今私に必要なのは「よく見せること、理にかなうことではなく、自分から放たれるエネルギーに従い」そして「今この瞬間に存在する」ことに焦点をあてた実践的な精神性を学ぶこと。まさにプロセスペインティングの目的にシンクロしたことを実践しているのだと自覚した。
直感が筆を動かし、色や形がメッセージとなって目の前の絵に現れ、答えを導いてくれる。潜在意識が顕在意識に変わり再び新たなストリートの絵が展開していく。これがプロセスペインティングの醍醐味なのだろう。
直感に導かれ完成した絵には、明るく温かい昼の空に満月、冷たく暗い海の底に太陽が描かれ、水の分子、風の分子、光の分子、全ての目に見えないエネルギーが循環していた。
ワークショップ以外の楽しみと言えば….
ワークショップのクラス以外の自由時間には、食事をはじめ、ヨガ・太極拳などの体験プログラムに参加したり、ゲスト同士で交流したり、温泉に入ったり、それぞれ思い思いの時間をゆっくり過ごすことができます。
ダイニングホールでの食事
エサレンに滞在中の大きな楽しみのひとつが食事。エサレンの農場やガーデンで収穫された野菜やハーブなどを含め、栄養たっぷりのヘルシーフードが中心で、どれも美味しい料理ばかりです。
食事の時間:朝食8:30 – 9:45、昼食12:30 – 13:45、夕食18:00 – 19:30
時間内に食事ができない場合は、ランチボックスを利用すれば好きな時間に食べることもできます。
ワークショップ参加者たちとの交流
今回参加したのは「ペインティング体験」のワークショップですが、他に太極拳とゲシュタルトグループが同時開催だったので、その参加者たちとも交流することができました。休憩や食事時に他グループと語りあえるのもひとつの楽しみです。
ロッジのダイニングは、ゲスト同士の交流の場でもあり、ピアノやタブラ、そしていくつものギターが柱にかかっていて、時にはセッションをする人たちの姿も見られます。
編集後記
今回は約18年ぶりのエサレン訪問でした。以前は、世界中からやってくる若者たちの来訪が多く、ヒッピー時代の余韻を垣間見るような独特な雰囲気を感じていたのに対し、今回は圧倒的に米国在住者(多くはカリフォルニア州)また若年よりも年配層の訪問者が多く、テスラやBMWのような高級車で乗りつける人がいるなど、だいぶ様相が変わったように感じました。
2012年~2015年のサンフランシスコ在住中に、幾度かエサレンに行くチャンスがあったにもかかわらず、ハプニング等で結局一度も訪問することができなかったので、もうご縁がないのだと思っていたのですが、2018年の年末に3週間のスパンで米国西海岸に行く絶好のチャンスが再び到来!ラスベガスで行われるカンファレンスに夫が出席している間に良いワークショップがないかと探してみたところ「ペインティング体験」という初心者でも気軽に参加できる魅力的なワークショップがあり、心ときめきました。ちょうど絵を描くことに挑戦したいと思っていたところのシンクロシニティ。さらにダメ元でスピリチュアル関連に関心の高い友人を誘ってみると、こちらも絶妙なタイミングの快いお返事、一緒にワークショップに参加することができました。
ペインティングに関しては、知識も経験も全くない未経験者だったので最初は少し不安を感じていたものの「プロセスペインティング」の目的を理解することで、他人の目も気にならなくなり、自分の内なる声とペインティングを通して素晴らしい対話の貴重な体験ができました。この経験を生かして今後も個人的にプロセスを継続していきたいと思っています。
また、このペインティング体験は、エサレンだけで行っているワークショップではなく、カリフォルニアをはじめ、ニューヨーク、ハワイなどでも開催されているので、興味ががあればぜひ参加してみてください。
Esalen Institute
55000 Highway 1
Big Sur, CA, 93920
888-837-2536