【東京下町風景】夏の風物詩!紫陽花と蓮の花が咲く「不忍池」

不忍池の移り変わり

上野恩賜公園の南西にある「不忍池」は、周囲約2km、面積約11万㎡の天然池。江戸時代以前の不忍池周辺は、藍染川から隅田川へ流れ込む沼地だったのだとか。先史時代、東京湾の入り江だった一帯が海岸線の後退とともに取り残され、紀元数世紀頃に池になったと言われています。

1625年寛永寺創建の際には、寺の山号を比叡山にならい東叡山として不忍池を琵琶湖に見立て、 竹生島(ちくぶじま)になぞらえた「弁天島(中之島)」を築造、「不忍池弁天堂」が建てられました。

1677年に出版された「江戸雀」に不忍池の蓮が詠まれた和歌(涼しやと 池の蓮を見かへりて 誰かは跡をしのばずの池)が載っていることから、この頃はすでに蓮池となっていたようです。

現在の不忍池は、一面がハスで覆われた「蓮池」、カワウが繁殖している上野動物公園内の「鵜の池」、ボート遊びができる「ボート池」の3つのエリアに分かれています。不忍池は桜の名所として有名ですが、紫陽花や蓮が開花する初夏から夏にかけても多くの人で賑わいます。

梅雨入りの頃から咲く紫陽花

6月の梅雨入り頃に紫陽花が咲き始め、見頃は6月中旬から下旬頃。不忍池通り側の遊歩道に紫陽花並木が続きます。

写真:2021年6月下旬撮影


不忍池沿いの遊歩道にも所々に紫陽花が咲いています。

梅雨明け頃から咲く蓮の花

梅雨明け頃から咲き始めるのが蓮池の蓮の花。6月下旬から7月初旬にかけては紫陽花と咲き始めの蓮の花の両方を鑑賞することができます。

江戸時代には紅色と白色など約10品種ほどの蓮が生育されていたそうですが、現在の不忍池では明鏡蓮、大賀蓮ほか、5品種ほどの蓮を見ることができます。(第2次世界大戦中に蓮が取り除かれ水田となってしまった時期があり、1955年に再び蓮が植えられ従来の蓮池に復元されました。)

※不忍池の蓮が鑑賞できるのは、北側の「蓮池」と南側の大きな池「鵜の池」からです。残念ながらボートに乗りながらの鑑賞はできません。

「蓮観察デッキ」から見る蓮池の全景

不忍池の南岸部には、2014年に完成した浮き桟橋構造の「蓮観察デッキ」があり、全面に広がる蓮池の蓮を眺めながら歩くことが出来ます。蓮の葉が広がる先に、不忍池の中央「弁天島(中之島)」に建つ「不忍池弁天堂」が小さく見えます。

写真:2021年6月下旬撮影

見頃を迎えた不忍池 蓮の花

不忍池の蓮の見頃は例年7月中旬~8月中旬頃と言われています。 蓮はゆっくりと開花し落花していくので比較的長い期間花を見ることができます。

写真:2016年7月下旬撮影

3日間の煌めき

蓮の花は早朝に咲き始め、お昼頃には閉じてしまうため、蓮の花弁が美しく開いている見頃時間は午前中(6時半〜9時頃がピーク)です。蓮の花は開いて閉じてを3日間繰り返し、4日目には開き切った花びらが散っていきます。ちなみに午後になっても開いている蓮の花は、その日を最後に散ってしまう花。また、ふっくらと大きく丸みを帯びた蓮の蕾は、午前中に咲いていて翌日も咲く蓮の花です。


蓮の開花時期の「蓮観察デッキ」は多くの人で賑わいます。

蓮の花言葉は「清らかな心」「神聖」

泥水の中から真っ直ぐに茎を伸ばし、その先に清らかな美しい花を咲かせる蓮の花。泥によって汚れることはありません。このことから蓮の花は清らかな心の象徴とされ、仏教では神聖な花とされてきました。

汚れた環境でも染まらず清く生きる「泥中の蓮」

 どんなに汚れた環境でもその汚れに染まらず清く生きるという意味を持つ「泥中の蓮」。真水などの綺麗な環境では小さくしか育たず、むしろ泥水が濃いほど大輪の花を咲かせるというその強さに感銘を受けます。

蓮の花のように凛とした生き方をしたい…そんな想いを抱かせてくれる美しい蓮の花をしばし眺めます。

不忍池へのアクセス

最寄りの駅から不忍池までは、京成線「上野駅」池の端口から徒歩約3分。 東京メトロ「上野駅」7番出口、都営大江戸線「上野御徒町駅」A3出口より徒歩5分。JR上野駅不忍口・西郷口・山下口から徒歩約7分です。