【三重・伊勢志摩】日本神話・伝説の地「天の岩戸(恵利原の水穴)」を訪問

日本神話に登場する「天の岩戸(あまのいわと)」は、全国にいくつか伝承の地とされる場所があり、三重県志摩市にある湧水「恵利原の水穴(えりはらのみずあな)」も「天の岩戸」と伝わる場所のひとつ。清水が湧く洞窟で、 1985年に名水百選にも指定されています。

伊勢神宮から「天の岩戸」へ

「恵利原の水穴(天の岩戸)」は、伊勢神宮から伊勢志摩国立公園内を南北に走る三重県道32号線(伊勢道路)を南に向かい、少し入った神路川上流の山の中腹にあります。(右手に「天の岩戸口」の看板と鳥居が見えたらUターンをするように右折し、約1.2kmほど進めば天の岩戸駐車場)

天の岩戸散策コース

駐車場から水穴がある天の岩戸までは400m。ゆるやかな上り坂です。

木漏れ日のなか鎮守の森を歩く

伊勢神宮の南東に位置する鎮守の森… 霊気が漂うようなヒンヤリとした空気の中、しばらく川沿いの山道をゆっくり歩きます。

空を見上げ天高く伸びた緑豊かな杉木立が静かに揺れる様を眺めながら、優しい木もれ日のキラキラとした光を浴びていると、空気はヒンヤリしているのに、心が温かく包まれていく感覚を覚えます。

天の岩戸神話について

天の岩戸は日本最古の歴史書「古事記(全三巻)」の中で代表的な神話。この「古事記」には、天地の始まりから神々の出生、推古天皇の時代に至るまで、神話や伝説を含む様々な出来事が記載されています。

皇室の祖神であり日本国民の総氏神である太陽神として日本神話に登場する神「天照大神(アマテラスオオミカミ)」は、黄泉の国から帰った「伊弉諾尊(イザナギノミコト)」が穢れを落とすため禊を行った際に左目から誕生し、伊弉諾尊から神の国「高天原(タカマガハラ)」を納めるよう告げられます。(この時、右目からは「月夜見尊月読命」、鼻からは「須佐之男命」の神が誕生)

高天原で多くの神々が暮らす中、海の世界を治めるべく弟の「須佐之男命(スサノオノミコト)」は乱暴狼藉を日々繰り返し、ある日のこと死人が出たひどいいたずらに天照大神は責任を感じ、天の岩戸という洞窟に結界を張って引きこもってしまいます。

全てが暗闇に閉ざされ、様々な災害が起き、困り果てた八百万の神々は、「天安河原(あまのやすかわら)」に集まって相談し、長鳴鳥(ながなきどり)を鳴かせてみるも失敗。次に「天鈿女命(アメノウズメノミコト)」の舞を踊り周りで騒ぎ立てます。すると、その騒ぎが気になった天照大神が外を覗いたときに、力持ちの「天手力男神(アメノタヂカラオ)」が岩の扉を開け放ち、天照大御神から出て頂くことができ、世の中が再び明るく平和な時代に戻ったと言われます。

ちなみにこのあと、暴れた須佐之男命は、数々の悪戯を反省し、出雲國(いずものくに)に行って「八俣大蛇(やまたのおろち)」を退治します。

※天の岩戸は、三重県だけでも、志摩市磯部町の「恵利原の水穴」のほか、二見興玉神社の「天の岩屋」、伊勢神宮外宮 の「高倉山古墳」(1970年代から入山禁止となっている)など3箇所存在します。

「天の岩屋(二見興玉神社)」の詳細ブログはコチラ

徒歩約5分で天の岩戸「みそぎの滝」

約5分ほど歩くと天の岩戸「みそぎの滝」に到着。橋を渡り、階段を上ると天照大神が隠れ住まわれたと伝えられる伝説の場所「天岩戸」です。

環境省選定 名水百選
「恵利原の水穴(天の岩戸)

霊水が流れる「恵利原の水穴(天の岩戸)」に到着

「恵利原の水穴」は石灰岩の岩山と高い樹木に囲まれた山の中腹にあります。洞窟からは一日3万tもの清らかな霊水が湧き出し、そのほとんどは上水道の水源となる神路ダムに流れ込むそうです。

水穴の前に立つと感じるヒンヤリとした霊気の風…。竹筒から流れてくる霊水を柄杓ですくって喉を潤すと清々しい気持ちになります。ペットボトルを持ち込めば汲んで帰る事も出来ます。案内板には生水を飲むのは控えてくださいとあるので、生水が不安な方は飲用前に煮沸をすると良いと思います。

伊勢志摩国立公園案内板より

恵利原の水穴(天岩戸)は、神路山の逢坂峠のふもとにある洞窟で、地元ではこの付近一帯を「高天原(たかまがはら)」と呼んでいる。ここが天の岩戸神話になぞられているのは、伊勢皇大神宮(内宮)の南東側に位置し、周囲は杉の大木がうっそうと茂り、凛とした霊気につつまれているからである。

洞窟からは渾々と清水が湧き出ており、この流れは「禊滝」とよばれる滝となり、神路川を経て絶えず下流の神路ダムに流れ込んでいる。またこの水は、昭和60年環境庁(現環境省)選定の「名水百選」に選ばれていて有名である。 神路山周辺の山々から流れ込んだ水は、神路ダムに蓄えられ、満々とただよう水面には、「獅子岩」の岩影や緑濃く育った神路山の植林の姿がそのまま写し出されている。

またこの神路ダムは、志摩水道用水として、志摩市民の生活飲料水の水源となっている。 世界の真珠王、御木本幸吉奥翁もかつては天の岩戸の崇拝者であり、自ら参道整備の費用を寄付し、昭和6年3月に完成記念として、当時の恵利原青年団員と一緒に記念の楠を手植した。これが拝殿前の中央にのびのびと育った楠で、「御木本楠」と名付けられている。

杉木立に囲まれた緑溢れる木もれ日…

天の岩戸周辺は、鬱蒼と茂る木々に覆われているため天気が良い日でも薄暗い… そんな中、水穴に近づいた瞬間に上空のポッカリと口を開けたような空間から一気に光が差し込んでくる様は、まるで天照大御神が暗闇から世界を照らすという神話の物語の瞬間を見せていただいたようで、厳かな雰囲気に包まれました。

「恵利原の水穴(天岩戸)」を訪れるなら、緑溢れる木もれ日が美しい初夏の天気が良い日がオススメ!清らかな空気のなか冷たい霊水の清浄感も味わえます。

古くから多くの人々の信仰を集めている天の岩戸の前には、1931年参道整備の完成記念に植えられたという「御木本楠」が空高く伸び、その周りに背の高い杉木立が生い茂っている…

恵利原の水穴(天の岩戸)へのアクセス

「恵利原の水穴(天の岩戸)」は、伊勢志摩国立公園内を南北に走る伊勢道路から行くことができます。(伊勢神宮から伊雑宮に向かう途中、右手に「天の岩戸口」の看板と鳥居が見えたらUターンをするように右折し、約1.2kmほど進むと天の岩戸駐車場)

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