【三重・伊勢志摩】お伊勢参りの締めくくりに「朝熊岳金剛證寺」へ!

標高555mの朝熊山にある「金剛證寺(こんごうしょうじ)」は、空海ゆかりの古刹で、伊勢神宮の鬼門を守る伊勢志摩最大のお寺としても有名。伊勢音頭で「お伊勢参らば朝熊かけよ、朝熊かけねば片参り」と謳われるように、参宮と合わせて金剛證寺を参拝する習わしがあるといいます。時間があればぜひ朝熊山まで足を伸ばしたいですね。

伊勢志摩スカイラインで「金剛證寺」へ

金剛證寺は、伊勢と鳥羽をつなぐ有料自動車道「伊勢志摩スカイライン」のちょうど中間に位置(料金所からは車で約15分)します。詳細は「絶景のドライブコース「伊勢志摩スカイライン」を走る」をご覧ください。

美しい新緑で覆われた「仁王門」

訪問したのは穏やかな晴天が続く初夏…仁王門へと続く階段は美しい新緑で覆われています。グリーンのトンネルをくぐるように階段を上ると仁王門の両脇に「金剛力士」と呼ばれる仁王(守護仏)が睨みをきかせて立っています。

迷いの世界と悟りの世界を表現した「連間の池と連珠橋」

仁王門をくぐるとすぐ目の前に極楽浄土のような風景が広がる「連間(つれま)の池」があり、中央の太鼓橋「連珠(れんじゅ)橋」が、この世とあの世の境界を表しています。

連間の池と連珠橋

この池は弘法大師が掘ったと伝えられる。池の中央に架かる橋は連珠橋と呼ばれ、古くは浦田織部藤原長次が願主となって、寛文12年(西暦1672)に創建されたものである。

連珠橋を境に、此岸(迷いの世界)と彼岸(悟りの世界)が表され、五月中旬から九月にかけて、数百の睡蓮の花が美しい風景を見せます。

連間の池に浮かぶ深い緑色の睡蓮の葉と朱色の連珠橋が映える

連珠橋を渡った先に「雨宝堂」

迷いの世界と悟りの世界、相対する心の境地を表現している連珠橋(現在立入禁止)を渡った先に「雨宝堂」があります。ちなみにこの太鼓橋の構造として、池底に橋脚が固定されていないのだそうです。

雨宝堂(うほうどう)

池の向こう岸(彼岸)に建つ御堂は、神仏習合思想の神像、雨宝童子尊を祀る。この神像は、大日如来の化身である天照大御神が日向国(宮崎県)に降り立った16歳の御影(おすがた)を、弘法大師が感得してして刻まれたと言い伝えられ、国の重文である。

本堂「摩尼殿」は国の重要文化財建造物

国の重要文化財に指定されている本堂「摩尼殿(まにでん)」の御本尊である「福威智満虚空蔵大菩薩(ふくいちまんこくうぞうだいぼさつ)」は、福徳・威徳・智徳の三徳を備え持つという仏様。

20年に1度の神宮式年遷宮の翌年に御本尊の御開帳が行われるそうです。拝観時間は9時〜16時でご朱印をいただくことができます。

本堂の前には、福丑と智恵寅の像があり、丑の頭上には黄金色に輝く大黒様が打ち出の小槌を持って天を仰いでいます。

福丑
この福丑は頭上に福の神と言われています大黒様を頂いています。一度この福丑に触れれば心清く、意志堅固となり福徳知恵増進し身体健康の御利益が授けられます。

知恵寅
御本尊虚空蔵大菩薩の広大なお知恵をいただいた寅の像です。安らぎの姿中に一視同仁の慈愛と威徳をお授けする知恵寅に御縁をお結び下さい。

どちらの像も頭から顔面にかけてピカピカですね。

色鮮やかな朱色の「極楽門」

金剛證寺の本堂から明星堂を越え2,3分歩くと色鮮やかな朱色の「極楽門」(1976年建立)が現れます。

極楽門
この門をくぐった者は仏様の慈悲の誓願によって、全て皆極楽浄土へ往生せしむるという悲願によって建てられたものである。

極楽門の横には「沙羅の木と羽衣菩薩」

極楽門の横には初夏に白い花をつけるという沙羅の木と穏やかな表情の羽衣菩薩像が立っています。

沙羅(しゃら)の木
祇園精舎の鐘の声沙羅双樹の花の色(平家物語) 沙羅はサンスクリットのシャーラ(高遠または堅固の意味)の音写で一根から二幹を生じ一双の形をしているので双樹と言われます。春の芽吹きは美しく初夏に白い花をつけ、また梅雨の晴れ間に音もなく落下して庭面に点在するさまは雪の花を散らした風情があります。原産はインドで現在我が国にもかなり野生しておりますが、この木は羽衣菩薩様に有縁の方が建立一周年を慶祝し、奈良吉野の山野を跋渉して採木献納せられたものであります。

卒塔婆が立ち並ぶ参道

「奥の院」に続く参道の両脇には、故人を弔うための卒塔婆(そとうば)がぎっしりと立ち並び延々と奥の院まで続いています。短い板塔婆から最長8mという迫力の角塔婆まで、おびただしい数の卒塔婆に圧倒されます…。

また苔むした数々の古い墓石がひっそりと佇み、静まり返った空間のなかで、どこからともなくカエルの鳴き声が聞こえてくる…ノスタルジックな風景に心温まる独特な趣を感じます。

卒塔婆供養林を抜けると金剛證寺奥の院「呑海院」

「奥の院(呑海院)」の御本尊は地蔵菩薩で、境内にはたくさんの地蔵尊が祀られています。朝熊山付近では江戸時代以降、宗派を問わず葬儀後に朝熊山に登り「岳参り」または「岳詣(たけもうで)」と呼ばれる風習があり、この奥の院に塔婆を立て供養する習わしがあるそうです。

朝熊山は霊地として死者の魂の行く場として考えられてきたようですね。とはいっても、暗いとか怖いとかいうイメージは全くなく、神宮林に囲まれヒンヤリとした空気の中に温かい光と平和を感じるまさに極楽浄土と言えるような素晴らしい霊地です。

パンフレットによると、塔婆を建立すると供養された御霊は、貪(とん)・じん・痴(むさぼり・怒り・おろか)の悪業を速やかに消滅して地獄、餓鬼、畜生の三悪道を逃れ、安楽国に往生できる功徳を得ることができるとあります。

卒塔婆の供養林
霊峰朝熊岳に卒塔婆を建て、亡き人の追善菩薩を弔うのは死者の霊魂は全く別の世界に行ってしまうわけではなく現実の山の中に死者の霊が集まる「他界(たかい)」がある、という捉(とら)え方(山中他界観)が、古代より、私たちに引き継がれているからです。

金剛證寺・奥の院
三重県伊勢市朝熊町548

金剛證寺へは車がないと行きづらい点もありますが、新たな令和の幕開けの年に、一度正式なお伊勢参りをしてみてはいかがでしょうか。

金剛證寺へのアクセス

伊勢自動車道「伊勢西IC」より、約5分で「伊勢志摩スカイライン」伊勢料金所。伊勢料金所から約15分。

公共交通機関でのアクセスは、タクシーまたは、土日祝(お盆、年末年始もあり)のみ運行する「参宮バス(スカイラインルート)」(五十鈴川駅前から約25分)を利用します。

伊勢志摩スカイライン 周辺マップ

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