「2014年夏のグランドサークル・ロードトリップ」のブログをもとに備忘録としてまとめました。 「グランドサークル」とは? 「グランドサークル (The Grand Circle) 」は、アメリカのユタ…
【コロラド州南西部】断崖絶壁に残る先史時代の岩窟遺跡!世界遺産「メサヴェルデ国立公園」を訪ねる
米国コロラド州の南西部、ロッキー山脈の麓にある世界遺産「メサヴェルデ国立公園」は、ネイティブアメリカンが残した大規模な岩窟住居跡。今回はグランドサークルのロードトリップでメサヴェルデのチェイパンメサを訪問しました。
※こちらの記事は他サイトに掲載していた2014年9月のブログをもとに再投稿しています。
目次
先史時代の集落遺跡群「メサヴェルデ国立公園」へ
「メサヴェルデ国立公園(Mesa Verde National Park)」(Mesa Verdeはスペイン語で「緑の台地」の意)は、プエブロ族またはアナサジ族と呼ばれる先住民が残した断崖絶壁の岩窟住居群が点在する国立公園。1978年世界遺産に登録されています。
アリゾナ州ページを9時に出発、途中で近くのフォーコーナーズ(アリゾナ・ユタ・コロラド、ニューメキシコの4州が交差するポイント)に立ち寄ったのち、メサヴェルデ国立公園に向かいました。
ここで注意したいのは、夏季にアリゾナ州とコロラド州を跨って移動する場合。どちらの州も山岳部時間帯のタイムゾーンですが、アリゾナ州がdaylight saving time制(夏時間 / 毎年3月第2日曜日~11月第1日曜日の期間)を導入していないため、夏時間は1時間の時差が発生します。今回はアリゾナ州からコロラド州への移動だったため+1時間の時差が発生、移動時間は約4時間程だったものの実質5時間かかってしまった計算です。
14時半にメサヴェルデ国立公園のビジターセンターに到着。レンジャーツアーのチケットは午前中までに売切れてしまうことが多いようですが、この日はまだどれも余裕があり、15時半スタートのクリフパレス・ガイドツアーのチケット(1人4ドル)をゲットすることができました。ビジターセンターの先に入園ゲートがあるのでアニュアルパスを見せて通過。そこからは上り坂の道が続きます。
※年々入園料は値上がりしています。2014年当時は車1台につき15ドルでしたが2020年現在は20〜30ドル(季節により金額変動あり)です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
Mesa Verde NP Vistor Center & Park Gate
メサヴェルデ最大規模の遺跡「クリフパレス」
園内で唯一の宿泊施設「ファービューロッジ(Far View Lodge)」で、「ウェザーリルメサ(Wetherill Mesa)」(冬期閉鎖)行きと、「チェイパンメサ(Chapin Mesa)」行きの道路が二手に分かれるので、「クリフパレス(Cliff Palace)」があるチェイパンメサ方面に向かいました。ビジターセンターからは車で約50分(ファービューからは約20分)かかります。
クリフパレスはメサヴェルデの中で最大規模の遺跡。一方通行の「クリフパレスループ(Cliff Palace Loop)」に入ってからすぐの場所にあり、展望台からクリフパレス遺跡の全体像がよく見えます。
クリフパレス遺跡のレンジャーツアー
クリフパレス遺跡に入れるのはレンジャーツアーのみ。展望台でガイドさんを待ち、15時半に約1時間のツアー開始!以下はレンジャーさんによる説明の一部です。
メサヴェルデは、近くの牧場主によって1888年発見。それ以来、考古学者による本格的な調査が始まり、1906年に国立公園として制定、1978年にアメリカ初のユネスコの世界文化遺産に登録された。
今からおよそ1400年前(日本でいえば聖徳太子の時代)、メサヴェルデ(緑の台地)で暮らした古代プエブロ族の生活は、トウモロコシや豆を栽培し、弓矢などの武器を使って狩りをし、家畜を飼い、動物の皮で衣服や毛布、骨で工具や武器を作っていた。
およそ800年前(鎌倉幕府の時代)には、断崖のくぼみに住居が移され、人口増加とともに住居が4階建て位まで高層化、衣服は動物の羽や皮から綿の布製に変わり、石や動物の骨を加工した芸術性の高いアクセサリーが作られるようになるなど、高度な文明で繁栄した。
メサヴェルデでの暮らしは約700年間続いたが(そのうち断崖生活は、わずか75〜100年ほど)、14世紀に捨て去られてしまった。(原因は特定されていない)
一見何もないように見える険しい渓谷地帯…、そのような豊かな暮らしがあったとはなかなか想像することができません..。
レンジャーの説明が終わったあとは、崖を降りてクリフパレス遺跡を見学。住居は日干しレンガや泥などで構築されており、4階建ての部分や崩れていた階段などは修復されたのだそう。また各部屋には小さな窓がついていて、しっかりと換気ができるようになっているのがわかります。
クリフパレス遺跡の内部に入ることはできませんが、全体的に完成度の高く見応えのある住居遺跡です。
球場の屋根のように伸びる上部の巨岩が、雨や日光を防ぐ自然のひさしになっています。
Cliff Palace Ruin
アップダウンの激しいトレイル
クリフパレス遺跡は崖下にあるため、その道程も結構険しい…。狭い岩間を通り抜けたり、急階段のアップダウンが激しいです。
「バルコニーハウス」からソーダキャニオンを望む
クリフパレスから車で5分程進んだところに「バルコニーハウス(Balcony House)」があります。こちらの遺跡も見学できるのはレンジャーツアーのみのため、展望台から「ソーダキャニオン(Soda Canyon)」の景色を眺めるだけにとどまりました。
午後遅めからの見学で時間が足らず、バルコニーハウスのツアーには参加できませんでしたが、こちらはクリフパレス遺跡よりアドベンチャー要素が高いトレイル。10mもの高さがある断崖絶壁のハシゴをのぼったり、狭い穴を這うように進まなくてはいけないところがあるなど、高所恐怖症、閉所恐怖症の方には厳しいかもしれません。
※崖下にあるバルコニーハウス遺跡をこちらの展望台から見ることはできません。約850m先のクリフパレスループ沿いに「ソーダーキャニオンオーバールックトレイル(Soda Canyon Overlook Trail)」があり、約20分ほど歩いた「ソーダキャニオン南展望台(Soda Canyon Overlook South)」(右写真左手に見える岩山)からバルコニーハウスを眺めることができます。
Balcony House
古代の高層マンション「スクエアタワーハウス」
クリフパレスループをまわったあとは、西側にあるもうひとつのループ道「メサトップループ(Mesa Top Loop)」にある「スクエア タワー ハウス(Square Tower House)」を訪問。こちらは展望台から見るだけとなります。
スクエアタワーハウスは、80以上の部屋があったという集合住居跡で、見どころは名前の通り高さ約8mのタワーハウス。今でいう高層マンションのようなもので、100年ほど使われていたそうです。
Square Tower House Ruin
多くの住居跡が見られる「サンポイント」
断崖絶壁にあるいくつもの住居跡を見渡せるのが「サンポイント(Sun Point)」。多くの先住民が1つか2つの小規模な住居に住んでいた中、多勢の家族が共同生活をした断崖の集合住居跡であるクリフパレス、マミーハウス、オークハウス、ニューファイアーハウス、サンテンプル、ファイアーテンプルなどの住居遺跡群がこの展望台から見ることができます。
View from the Sun Point
Oak House Ruin
クリフパレスの右方向に、浅くて細い岩の切れ目が見える。目の前はつるんとした岩肌の絶壁だというのに、そんなところにまで人が住んでいたとは驚きです。
House of Many Windows
緑の大地にある遺跡「サンテンプル」
断崖住居と違い台地につくられた「サンテンプル(Sun Temple)」は、完成を待たずに放棄された状態で見つかった遺跡。儀式のための建物と考えられており、建物内部を上から見下ろす事ができます。
Sun Temple
最も保存状態の良い遺跡「スプルースツリー ハウス」
「スプルースツリーハウス(Spruce Tree House)」は、夏場であればガイドツアーに参加しなくても自由に見学できるので、時間の制約がなく行きやすい遺跡。最も保存状態が良い住居跡で、90%がオリジナルのままなのだそうです。
こちらの入口に到着した時点で、終了時間15分前…迷ったもののせっかくなので急いで見学することに…。急坂の上り下りに10分かかり、見学できたのはわずか5分しかなかったものの、地下式の宗教的建造物「キバ(Kiva)」の中にも入ることができました。
集落に必ずあるのが祈祷などの儀式や社交の場として使われた「キバ(Kiva)」と呼ばれる公共施設。こちらの遺跡では当時と同じようにはしごでキバの内部に入ることができます。(写真中央下部に突き出た2本の棒はキバに入るためのハシゴ)
Spruce Tree House Ruin
当時の様子が分かる模型
スプルースツリーハウス近くにある「チャピンメサ考古学博物館(Chapin Mesa Archeological Museum)」のミュージアム内にある模型。当時の様子がわかります。
Chapin Mesa Archeological Museum
360度の大パノラマ「パーク ポイント」の夕焼け
岩窟住居群を見学したあとは、標高2612mの「パークポイント(Park Pint)」へ。急勾配の山道をあがった山頂近くにパーキングがあり、そこから600mほど舗装されたトレイルを歩くと360度の大パノラマが広がるパークポイントです。夕焼けに染まる空がとても綺麗でした。
日が沈んだ時点ですでに20時。パークポイントからビジターセンターまでの約20分は、夕焼けに染まった空を眺めながら丘陵地のドライブを楽しみました。
Sunset @ Park Point, Mesa Verde NP
あとがき
メサヴェルデ国立公園はアクセスしにくい不便な場所にあり、なかなか足を伸ばせなかったのですが、今回のグランドサークルトリップにて訪問初達成!短い時間ながら素晴らしい遺跡を見学することができました。ただしメサヴェルデ国立公園に到着したのが遅めの午後だったため見学できたのはチェイパンメサのみ、ウェザーリルメサまで行くことはできず、ロングハウスやステップハウスを見ることができなかったのは少し心残りです。
今回は旅のスケジュール上、クイック観光になってしまいましたが、園内には宿泊施設(キャンプ場を含む)やピクニックエリアがあり、またいくつもの展望台と博物館、ハイキングトレイルなど、見どころも豊富なので、できれば丸1日かけてゆっくりと見学したい観光スポットです。