タワー・ヒルからシティエリアの人気スポットへ ロンドン中心部「タワー・ヒル駅(Tower Hill Station)」を起点に、歴史の面影を残す街角や個性的なマーケット、アートに出会える美術館まで、テ…
【イギリス・ロンドン】世界の名画を堪能!西洋美術の傑作に出会える「ナショナル・ギャラリー」
目次
中世〜19世紀の西洋名画が揃う「ナショナル・ギャラリー」
英国を代表する美術館のひとつ「ナショナル・ギャラリー(NG)」は、ロンドン中心部のトラファルガー広場に面して建つ国立美術館。1824年に設立され、13世紀から20世紀初頭までの西洋絵画を中心に、レオナルド、マネ、ゴッホ、モネ、ルノワール、フェルメール、ターナーなど名だたる画家の傑作が鑑賞できます。
営業時間は10:00-18:00で、金曜日は21:00まで営業。一部の特別展は有料となっていますが、入場は無料(寄付歓迎スタイル)です。建物自体もクラシカルな外観が印象的で、館内は見やすく整備されています。アクセスが良いので、観光の合間に立ち寄るのにも最適なスポットです。

壮麗なメインエントランス「セントラル・ホール」
ナショナル・ギャラリーには複数の入口がありますが、トラファルガー広場側のメインエントランスから入ると、主要な展示室へ放射状に広がる中心空間「セントラル・ホール(Central Hall)」が迎えてくれます。見上げれば、重厚な大理石の柱とクラシカルな天井装飾、自然光を取り込むドーム型天窓が目を引きます。足元には精緻なモザイク模様が広がり、まだ入口に立ったばかりとは思えないほど、その壮麗さと格式の高さに圧倒されます。

大きく5つの時代に分かれた展示
ナショナル・ギャラリーの展示は、ゴシック期からポスト印象派まで、大きく5つの時代に区分されています。今回は時間の都合もあり、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品と、バロック期以降からポスト印象派までを中心に観覧しました。
- 1250–1500年 宗教画を中心とした「ゴシック〜初期ルネサンス」 (セインズベリー・ウィング)
- 1500–1600年 レオナルド、ミケランジェロ、ティツィアーノなど「ルネサンス全盛期」
- 1600–1700年 カラヴァッジョ、レンブラント、ルーベンスなど「バロック期」
- 1700–1900年 風景画や市民生活の描写が拡大した「ロココ〜新古典主義〜ロマン主義 印象派初期」
- 1900–1920年 ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、セザンヌなど「ポスト印象派中心」

※ナショナル・ギャラリーの展示室番号は、展示作品や時期によって変わる可能性があります。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「岩窟の聖母」
レオナルド・ダ・ヴィンチの「岩窟の聖母(The Virgin of the Rocks) 」は、1495〜1508年頃に制作された祭壇画の一部で、ミラノのサン・フランチェスコ・グランデ教会における「聖母マリアの無原罪懐胎」を祝うために描かれた作品。1483〜1486年頃に手がけた最初の作品は、現在パリのルーヴル美術館に所蔵されています。
本作では、険しい岩山に覆われ、植物が生い茂る洞窟の中で、聖母マリアは幼子の洗礼者ヨハネの肩にそっと右手を添え、幼子キリストの頭上に左手をかざしています。その傍らには、大天使ウリエルが優しく見守るように描かれ、キリストはひざまずくヨハネへ祝福を与えるように右手を上げています。静謐でありながら神秘に満ちた場面です。
レオナルドは、暗い背景から人物が浮かび上がるように見せるため、輪郭をぼかして影を包み込む革新的な技法(スフマート)を駆使しました。赤外線調査による下絵からは、当初は異なる構図を計画していたものの、後にルーヴル版とほぼ同じ構図へと変更したことが判明しています。

イタリア・バロック美術 1600-1700年
「Room 32」は、カラヴァッジョやグイド・レーニなど、大型で劇的なイタリア・バロック絵画の傑作が集まっている展示室。エンジ色の壁と幾何学的な天井のデザインが印象的です。

ブリティッシュ・コレクション 1740–1800年
「Room 34」は、18世紀後半の英国絵画を集めた展示室で、ジョージ・スタッブスやゲインズバラ、ターナーなど英国系画家の作品が並びます。ブルーの壁と天井の上品な装飾が美しい部屋です。

フランスとイギリスの風景画家「クロード&ターナー」
「Room 36」には、17世紀フランスの風景画家クロード・ロランの作品(写真左上の2点)と、19世紀イギリスの風景画家J.M.W.ターナーの作品(写真右上の2点)が並びます。この展示は、ターナーが1851年の死去に際し、自作をナショナル・ギャラリーへ遺贈する条件として「常にクロードの2作と並べて展示すること」を遺言に残したことに基づくものです。時代も画風も異なる2人の巨匠の作品を、直接比較しながら鑑賞できる貴重な空間です。


ロマン主義的歴史画「レディ・ジェーン・グレイの処刑」
「Room 38」に展示されているポール・ドラローシュ作「レディ・ジェーン・グレイの処刑(The Execution of Lady Jane Grey
)」(1833年)は、ナショナル・ギャラリー所蔵作品の中でも人気の高い歴史画のひとつ。1553年にエドワード6世の死後、ジェーン・グレイはイングランド史上初の女王として即位しましたが、後の女王メアリー・チューダーを支持する派閥によって、わずか9日で廃位させられ、ロンドン塔に幽閉された後、1554年2月12日、斬首刑に処されるという悲劇の最期を迎えます。
この作品では、ジェーンの上着が床に崩れ落ちた侍女の膝の上に置かれ、もう一人の侍女は壁に顔を伏せ嘆き悲しみ、処刑人が待機する中、目隠しをされたジェーンがロンドン塔総督に手を引かれ、処刑台へと導かれる瞬間が克明に描かれています。
暗い背景と純白のドレスの対比が、無垢な若い命の悲劇性を際立たせている一方、権力闘争に翻弄されながらも、プロテスタントという信仰を決して見失わないジェーン・グレイの強い信念が伝わってくる、胸を打たれる場面です。

フランス絵画「初期印象派」 1860年-1880年
「Room 41」は、マネ、ルノワール、モネ、シスレー、ピサロなど1860〜1880年のフランス初期印象派の絵画を集めた展示室。風景画や日常生活を描いた作品が並び、鮮やかな筆致と明るい色彩で描かれた情景は、古典的で厳格な技法に基づく当時のアカデミック美術とは対照的で、近代絵画への転換期を象徴しています。

ゴッホ、ゴーギャンなど「ポスト印象派」1880–1905年
「Room 43」は、ゴッホ、ゴーギャン、ルノワールなど、1880〜1905年のポスト印象派の絵画を集めた展示室。ここは、互いに影響を与え合ったというゴッホとゴーギャンの作品を同じ空間で鑑賞することができる貴重な空間です。
ゴッホとゴーギャンは1888年末、南フランスのアルルで約2か月間共同生活を送りました。互いに強く影響を与え合い、また芸術観の違いから激しく衝突。ゴッホの「耳切り事件」を機に関係は決裂し、ゴーギャンはアルルを去りました。
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 1853-1890年
ゴッホの有名な絵画「ひまわり」は、世界中の美術館やギャラリーに展示されているバージョンのうちのひとつ。ゴッホは、アルルの自宅「黄色い家」に共同生活をするゴーギャンを迎え入れるため、ひまわりの絵を描いて部屋に飾ったといいます。
「ゴッホの椅子」は、ゴーギャンと合流した直後に描いたという作品で、「ゴーギャンの椅子」(アムステルダム・ゴッホ美術館所蔵)と対になって描かれた一枚です。
未完成とされる「オーヴェルの近くの農家」は、ゴッホが亡くなる約1か月前に描かれたという作品。人生最後の数か月を過ごしたパリ北方の小さな町オーヴェルの風景で、ゴッホは苔むした茅葺き屋根をとても気に入っていたといいます。


ポール・ゴーギャン 1848-1903年
晩年は主にタヒチ島で過ごしたというゴーギャンは、多くのタヒチの絵画を残したことで知られているパリ生まれの画家。晩年の1898年に描いた、南国らしい木々や花々の中で人々の姿が鮮やかな色彩で描かれている名作「ファア・イヘイヘ(Faa Iheihe)」では、理想郷として思い描いたタヒチの空気感が色濃く反映されています。また、「収穫:ル・プルデュ(Harvest: Le Pouldu)」は、彼がタヒチに渡る前、ブルターニュ地方で過ごしていた時期に描かれた作品で、後のタヒチ作品へとつながるスタイルの萌芽が感じられます。

ナショナル・ギャラリーのギフトショップ
ナショナル・ギャラリーのギフトショップは、名画をモチーフにしたポストカードやアートプリント、ステーショナリー、ホームグッズなど、美術館ならではの品が揃うショップ。こちらではカレンダーやゴッホのひまわりポスターなどを購入することができました。

煌めくトラファルガーの夜景に包まれて
金曜日は夜21時まで開館しているということで、観光のあとサクッとNGを訪問。わずか2時間弱の滞在でしたが、混雑も少なく、ゆったりと名画の世界に浸ることができました。
ギャラリーを出ると、外はすっかり夜の装い。トラファルガー広場一帯が美しいライトアップに包まれていました。
The National Gallery
Trafalgar Square, London WC2N 5DN
▼隣接する「NPG」についてのブログ記事は下記リンクより御覧ください☆
